NEXT STAGE of EC:EC/D2C市場で活躍するトップマーケターたちが語る、勝ち残るためのマーケティング戦略【DAY1】

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急速に拡大するEC/D2C市場。予測が難しい新時代を勝ち抜くために、いま、そしてこれからすべきこととは何でしょうか?

この問いの答えを探すべく、2021年5月25日(火)・26日(水)の2日間にわたりオンラインイベント「NEXT STAGE of EC~国内屈指のトップマーケターたちが見据える、ECの未来~」が開催されました。

今回のイベントでは、ECシフト時代のなかで新たなビジネスチャンスが生まれるとともに、さらなる市場の競争激化が見込まれる「EC/D2C業界の未来」をテーマに、マーケティングの最前線で活躍するトップマーケター及びリーダーが登壇しました。いま重要と考えるマーケティング戦略と成功事例、今後必要となる新たなチャレンジについて語り尽くします。

それでは、DAY1のプログラムをレポートしていきたいと思います。

LTV予測のもと実践する効率的な広告投資が、D2C事業成長のカギ

LTV予測のもと実践する効率的な広告投資が、D2C事業成長のカギ

基調講演では、JIMOS代表取締役社長、ニトリホールディングス上席執行役員、エトヴォス取締役COOとして、D2C事業経営全般に10年間携わってきた田岡 敬氏が登壇しました。

田岡氏からは事業成長難易度が高くなってきたD2C市場において、LTVを基にした広告投資判断の重要性を算出方法も踏まえてお話しいただきました。

市場内の新規顧客獲得競争の激化、薬機法の規制強化により、安定した事業成長を続けるためにはいかに広告投資を効率よく行うかが重要な時代になっていると語ります。

「広告投資を回収するというのは利益のお話です。そこで重要な概念として、売上ではなく利益ベースの将来予測、つまりLTV(Life Time Value)に基づいた広告投資判断をすることが大切になってきます。しかしLTVは実測して評価するのに期間が必要であり、投資の意思決定が遅れる原因となります。そこでLTVを実測するだけではなく“予測”することが重要になるのです」

LTV計測・評価の概念

田岡氏はLTV予測の算出方法として、F1~F3までの数値に関しては実測管理をして、F4以降の数値に関しては過去のデータや経験から類推やシミュレーションをする方法を紹介してくださいました。

そして広告投資判断でLTV予測が担う役割として以下の2点を挙げました。

  • 早期に広告投資全体がROIの絶対基準を満たしているのかが把握でき、投資の拡大縮小判断を行える。
  • 商品や施策ごとの相対比較が可能になり、利益が最大化するように投資を見直せる。

従来のCPAによる投資判断だけではなく、LTV予測を活用して投資判断や相対比較を行うことができれば意思決定速度も上がります。

田岡氏はこの点を、「デイトレーダーのようにLTV予測で管理された商品や施策ごとのROIを見て、効率の良い方へ広告費をスピーディーに張り替えることが可能になります」といった言葉で表現しました。

最後に田岡氏から、イルグルムと一緒に広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」のD2C向けLTV予測機能「LTVForecast」の共同開発について話がありました。(6月28日より提供開始)詳細について気になる方は、ぜひ下記特設サイトよりご確認ください。

2021年6月28日リリース
最短1ヶ月で今後のLTVを予測し、広告投資判断を実現する
D2C(リピート通販)事業向けサービス”LTVForecast”

LTVForecastについてはこちら

選ばれ続けるブランドが向き合っていることとは

市場のリーダーたちが、いま見据えているそれぞれの未来

冒頭は西井氏と森氏から近年の消費行動と顧客接点の変化についてお話がありました。

昨今、ますます難しくなっている新規顧客獲得にどう向き合うのか。マーケターの多くがこの問いに頭を悩ませています。西井氏はこの問いに対して既存ユーザーの推奨意向が重要になると語ります。

西井氏:「今までは購入後のお客様を管理するためのCRMやLTVという捉え方をしていたと思うのですが、まさに今もう一周回ってAISASモデルになっている感じがしています。AISASの最後にシェアがあるように、継続して、ファンになって、口コミを生むというところが新規顧客獲得に一番効いていると思っています。私たちも“SNSで他の人にシェアしたい”と思ってもらえるのかを考えながら、商品作りやコミュニケーションをしています」

また森氏は逆にコアユーザーほど「このブランドは他の人に知られたくない」と思ってくれているといった話から、NPSよりNRSを重要視していると語りました。
※NPS=ネット・プロモーター・スコアの略。ユーザーの「満足度」ではなく「推奨度」を測る調査方法の一つ。
※NRS=ネット・リピーター・スコアの略。ユーザーの「継続意向」を測る調査方法の一つ。

森氏:「アパレルブランドは“他の人が知らないものを自分は着ている”という自己肯定感がすごく大事な商材だと感じています。そうなるとNPSよりNRSのほうが良いのではと思い、1年半ほど前にNRSを重要視する方向へと変更しました」

後半に入り、お二人から事業拡大において最も重要な指標について話がありました。

事業拡大において最も重要な指標とは

西井氏は“LOVEをはぐくむ家族型ロボット”「LOVOT」を例に出し、UGC(User Generated Content)が重要である点を改めて強調しました。服の着せ替えを通して商品を自分事化してもらうことや「おはらぼ」という新しい言葉を生み出し、それを真似してもらうことでSNSへの投稿を増やして話題の活性化を実現しているそうです。

森氏は五感で満足してもらって記憶に残すこと、ひいては顧客のブランド体験満足度が重要だと語ります。また事業を拡大していく中で、それでもブランドの価値観やロイヤルカスタマーを保つためには、無駄でも良いからこだわりを尊重し続けることが大切だと話しました。

見据えるNEXT STAGEについて西井氏は「変化するデジタルに対応できる人材、組織戦略に取り組んでいく」と話し、森氏からは「点だったデジタルが線になってきている。このまま小売のサービス化の本質を追求していく」という言葉をいただきました。

最後に田岡氏から「お客様と出会い、ブランド体験を通し、それがシェアされ、また新しい顧客と出会う。この1つの輪が繋がる時代が始まっている。そしてその螺旋階段を上っていけるブランドが強くなっていく」という言葉にて、セッションは幕を閉じました。

具体的な話が多く、売れ続けるブランドから学べるヒントが多かったのではないでしょうか。

デジタルとアナログの長所を組み合わせることで、シナジーが生まれる

デジタルとアナログの長所を組み合わせることで、シナジーが生まれる

石川氏からは「デジタル×アナログ」の将来性について、DINOS CORPORATIONが運営する通販ブランド「DINOS」で取り組んでいることも含めて共有していただきました。

「『44%と4%』という数字の話があります。2017年のデータですが、アメリカ国内のEC売上全体に占めるAmazonの売上割合は44%という寡占状態でした。しかし、アメリカ国内の”小売り全体”の売上においては、それが4%でしかありません」

アメリカ国内の売上全体に占めるAmazonの売上割合

つまりAmazonですら全米小売の4%でしかなく、ECには限界があることについて言及しました。

「ECで1位を取り続けるということには意味がなく、やはりリアルに出るしかないのです。Webで培ったテクノロジーを使って、リアルの購買体験をより良くするというアプローチで外に出ていく。それが競争戦略において優位に働きます」

石川氏によるとAmazonではAmazon Goへの進出がその流れだとのこと。さらに購買フローの起点である「無関心」から「認知」へと移るタイミングの多くが、やはりリアルにあると説明がありました。

次に石川氏がDINOS CORPORATIONで実際に取り組んでいる事例の話題へと進み、「デジタル×アナログ」が生み出す新たな顧客体験の在り方について、2つの取組みを紹介いただきました。

  • Webから離脱してしまった時にカートに入れたままになった商品を、24時間以内にはがきに掲載して送り届ける「パーソナライズDM」
  • 購入ログに応じて過去に買った商品が掲載され、その商品と似ている商品のコーディネート画像がAIにより紹介されている冊子

これらの取組みを可能にするのはWeb上で収集できる「中間データ」であり、DINOS CORPORATIONでは、このデータを活用した新たな取り組みも開始されています。
※中間データ:購入の1つ手前のデータで、どのような商品を見て、カートに入れているのか、お気に入りしているのかなどの行動ログを指す。

「これまでWeb上でしか収集できずにいた中間データを、リアルでも見える化するためにアプリを開発しました。このアプリでは、お客様が商品カタログをスキャンすることで商品の在庫や価格の情報を確認することができます。そして私たちはそのデータを情報として収集しています」

最後に石川氏はヘッドレスコマースが次の流れとして存在しているとコメント。「デジタル×アナログ」の流れの先には、そもそものプラットフォームの入れ替えが発生するかもしれないといった興味深い予想を経て、このセッションは幕を閉じました。
※ヘッドレスコマース=フロントエンドの仕組みとバックエンドの仕組みを分離可能にしたECプラットフォーム。

平均値の罠に陥らないためのデータマネジメント術

平均値の罠に陥らないためのデータマネジメント術

西守氏からは急成長を続けるビタブリッドジャパンが成長する背景を、詳しく共有していただきました。西守氏は「データマネジメントが成長に大きく寄与している」と話し、BI構築の理由と、そのこだわりについて教えてくれました。

「私たちのBIツールは全ての項目が自動更新されます。そのおかげで分析がより高度になり、データ集計などの単純作業は激減しました。もともと自分たちのビジネスにぴったりなBIツールになかなか出会えずにいたので、それなら思い切って好きにカスタマイズできるように、自分たちで構築する方が良いと考えました」

構築したBIツールには今を知るための「指標系ダッシュボード」と、過去のトレンドを重視している「分析系ダッシュボード」の2種類があるそうです。BI導入後には社内でデータをより見える化したいという欲求が増えただけでなく、何をしたらLTVがどのくらい上がったのかが分かるようになったと言います。

進化し続ける自社製BIダッシュボード

ここから話は、BIツールの実際の活用方法について2つの具体例を元に展開されていきます。

  • 長期的なLTVでは評価が難しいため、短期的なLTVを生み出した。
  • どこが問題なのかを絞り込むため、残存率とLTVを見て広告や媒体を管理した。

「短期的なLTVは中長期のLTVに必ず連動します。そして平均値だけを見て判断せずに、できるだけ細分化して分析をしましょう。CPAだけではなくLTVにも気を配ることで、更に多くの顧客を集めることができるというのがデータマネジメント強化の本質だと考えています」

今後はCPAと短期LTVを組み合わせたBIツールへと進化させたいと話す西守氏。加えて、未来予測のモデルも検討していると教えてくださいました。


さて「NEXT STAGE of EC」DAY1のイベントレポートはここまでになります。
DAY2のレポートはこちらをご覧ください。

8月31日までは以下から期間限定でアーカイブ配信をご視聴できますので、この機会をぜひ逃さずにご覧くださいませ。

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