2020年11月25日に開催した「AD EBiS Conference2020」は約1100名以上に申し込みいただきました。今回は、「データマーケティングの壁を超えろ」をテーマに、最前線でデータマーケティングに取り組む企業から、データの活用においてどのような壁を乗り越えてきたのか、各社の事例をご紹介いただきました。
本記事では、挨拶から5時間半に及ぶ全7名のプログラムをレポートしたいと思います。
カンファレンス開催の背景
オープニングは、株式会社イルグルム 代表取締役CEO 岩田より挨拶からはじまりました。
まず、アドエビスの紹介として、2020年10月のサービスデザインの刷新について触れた上で、2021年1月にアドエビスのフルリニューアルすることを発表しました。
「より簡単に、よりスピーディーに、データを分析・活用できる広告効果測定プラットフォームとして生まれ変わります。」
次にデジタルマーケティングを取り巻く環境の変化を下記のように捉え、今後の競争激化により今までと同じやり方が通用しなくなるとして、本カンファレンス開催の背景について述べました。
「競争が激化する中で、必要なことの一つに『データ』があります。マーケティングが飽和している中、いかにデータに基づいて戦略立てして取り組んでいけるかが重要です。もう一つは『連携』です。どんなにデータがあっても分断されていては意味がなく、繋ぐ必要があります。」
こうしたデータの連携は部門を横断して進み、いわゆる「マーケティングDX」を進めることが事業成長に欠かせなくなり、実際にデータを上手く活用している企業様にご登壇いただき、今後の競争を勝ち抜くためのヒントを得るためのものとして本カンファレンス開催の背景を説明し、基調講演である北の達人コーポレーションの木下様にバトンを繋ぎました。
利益を重視したマーケティングによる業界の未来
基調講演として北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下様から、利益を最大化させる広告運用の3つの極意についてお話しいただきました。
3つの極意とは以下の通りです。
- 上限CPOの決め方
新規顧客獲得数を増やすとCPAが高くなる傾向があるため、利益を最大化するためにはLTV-CPOが最も高くなるポイントを見つけ出すことが大切。 - CPOはグロスで考えてはいけない
上限CPO内に費用が収まっていても、広告単位で分けると上限CPOを越えている場合があり、その広告をやめることで利益率が上がるという考え方 - 親子CPOの考え方
通常広告とリタゲのように明確な関連性がある広告の場合は、繋げて算出することで一方の上限CPOを引き上げることが可能。(親広告:通常広告、子広告:リタゲ・指名検索)
さらにAI時代の次世代マーケティングについて触れました。
「AIによる広告配信には差別化の概念がなく、同質化の動きを取ります。そのため、プロダクト戦略の立案と教師データの供給が重要になります。」
最後に「ユーザーから受け入れられていない広告をやめてセグメントを正しく行うと、広告の相場が下がり、業界全体の利益率が上がります。それだけでなく、ユーザー様側も興味のあるコンテンツのみ配信され、メディアの視聴時間が長くなり、結果的に広告枠の増加にも繋がります。」とし、一社一社が利益を重視したデジタルマーケティングを行うことの重要性についてお言葉をいただきました。
収益性を加味した投資判断に繋がる統合型マーケティング
吉本からは「新時代に求められるコミュニケーション戦略と統合型マーケティング」について話がありました。
昨今のマーケティング環境の変化による競争激化やコロナウイルスによる情勢不安について触れた後、現在マーケターが抱えている課題を説明しました。
「EC事業者様へのアンケート調査の結果、新規顧客の獲得だけでなく、競争激化や情勢不安により広告やメディアの使い方やコストへの意識が近年急激に高まっています。つまり広告などの投資対効果の測定が課題となっているのです。」
その中でマーケティングにおける投資と収益の関係性をD2C×サブスクリプションモデルとBtoB×SaaSモデルを例に解説しました。
「D2C×サブスクリプションを例に上げると、CPAは入り口の部分でしかありません。そこで獲得したお客様のリピートによる収益を見定めた上で投資判断をすることが重要です。また、BtoB×SaaSのビジネスも同じような収益構造になっています。」
次に2021年に重要なテーマとしてデータ統合と予測モデルの構築を上げました。予測モデルを構成する要素として「収集・結合・予測・判断」を上げ、この中でアドエビスが考えるコミュニケーション設計を説明しました。
「アドエビスはこれまで、購入に至るきっかけを正確にトラッキングしていくことに注力をしてきました。そこで生まれた新規顧客の売上や受注情報との紐付けはもちろん、その後のリピートや継続率、最終的にもたらす利益をマーケティングパターンごとに計測し、収益を予測し、効果測定していくことで適切な投資判断に繋がると考えています。」
ただし、そこにはノウハウとリソースの課題もあり、それを解決するものとしてアドエビスの新商品である「データ統合型分析パッケージ」について触れ、終了となりました。
吉本の登壇にあった新商品の情報がダウンロードできます。
ぜひご覧ください。
データとときめきを重視したSpartyのプロモーション
坂口氏からは「パーソナルデータを活用したプロモーション戦略の全貌」として、WebとLTVデータの統合からLTVを上げるための施策についてお話しいただきました。
「はじめはエクセル管理をしており、LTVとデータ連携はしていませんでした。そこで、まずWebの数値を一気通貫で見る手段としてアドエビスを導入しました。」
さらにCRMデータと紐付けることで、どういう広告を見たお客様が、どのような処方を受け、どのようなフィードバックをし、現在に至るまで使い続けてくれているのかを一気通貫で見られるようになったそうです。
「こうしたデータを見てPDCAを回すことは大事ですが、バリューの一つにある『きゃーっ♡にかける』という言葉を大切にしており、感覚的なときめきを妥協しないようにしています。」
話はLTVを向上させるための施策に移ります。D2C×サブスクリプションのビジネスモデルでパーソナルデータを基軸とする同社では、販売後のリピートを後押しするためにフィードバックデータを元にPDCAを回しています。
特に大事にしているのは購入後のフィードバック部分で、フィードバックが有る顧客と無い顧客ではLTVに20%の差が出るため、フィードバックを促進したり、その中で「匂いの満足度が高い」という結果があれば、それを訴求に活用するといった手法で新規獲得から継続利用までのコミュニケーションを強固なものにしています。
データ活用は試行錯誤しながら改善しつつも、データ以外のときめきや商品の見られ方も忘れずにPDCAを回していくことがSpartyのプロモーションであるとしつつ、最後に今後の展望をお話しいただきました。
「MEDULLAはもともと『良い商品はたくさんあるけど選べない』という問題を解決するために生まれました。『これが良いものだよ』という答えを提示するのではなく、パーソナルデータを元に、一緒に悩みを分かち合うサービスとして様々な商品をお届けしたいと考えています。今後もパーソナルデータを元に、これからのブランドをお客様と一緒に作り上げていけたらと思います。」
お客様のためのディーゼルらしいマーケティングDX
河野氏からは自社の業務&投資効率アップの改革と、様々な目的からなる「マーケティングDX」について説明いただきました。
同社では認知からCRMまでフルファネルコミュニケーションストラテジーを策定し、PDCAを回しながら結果に応じてコストアロケーションをした結果、全てのフェーズで前年を越え、EC売上も昨対比150%以上になりました。
「ただし、ここまでの道のりは大変でした。2019年2月に入社して最初のミッションは広告投資を最適化することでしたが、それ以前に課題が多くあり、まずは4つの改革を行いました。」
これらの改革によって業務効率アップ、投資効率がアップした同社。しかし、これではチャネル単位の最適化はできてもユーザー起点での最適化ができていないことから、CDPの必要性を痛感し、マーケティングDXの推進に乗り出します。
「ディーゼルジャパンのマーケティングDXの目的は単に効率化だけではなく、データを活用した顧客理解からCXの向上、最終的にはLTVの最大化としています。」
河野氏は「これらに紐づくCDPやBIといったデジタルツールをDigital Marketing部だけでなくディーゼルに所属する全てのスタッフが活用できるような意識の統一と仕組み・体制の導入を進めている」とし、「ディーゼルらしさを忘れないマーケティングDXを推進したい」とまとめました。
不動産業界のCVの質を向上させる3つのデータ活用
木村氏からは、不動産業界におけるWebマーケティングの特色と、データを活用した不動産プロモーションについてお話がありました。
不動産業界ならではWebマーケティングの特色として以下の4つを挙げました。
- 高額商品であるため資料請求から成約に至る率が低い
- エリアや間取りによって契約単価が大きく異なる
- 検討期間が長くCV前のユーザーの動きが多い
- 一人あたりの購入回数が少ないため想起率を上げることが必要
その上で、不動産プロモーションで発生する課題を説明し、データを活用した解決策を提示しました。
「課題①に対しては契約率・単価を加味したCPAの、課題②に対してはCV属性データを取得し、プロモーションしている物件にマッチしているCVの割合を元にチューニングを行う。課題③に対してはアトリビューションスコアによる初回接触広告の適切な評価が挙げられます」
特にアトリビューションスコアによる評価では、配信した広告を得点化し偏差値を算出することで、目的にあった広告のプランを選択できるという手法を紹介しました。
「このように初回接触や間接効果でしっかり成果を返している媒体を正しく評価することが重要です」
今後の展望として「WebCV以降の契約データをリアルタイムに追える状態を当たり前にすることと、広告をクリックしなかったユーザーのブランド想起率やインプレッションの評価を正しく行いブランディング施策を行いたい」と競合が使っていないデータを活用することが成果に明確な差が出るとまとめました。
あるべき姿を見据えたデータ活用環境の構築
岩本氏からは「ポストCookie時代のデータマーケティング」として、優良顧客基盤を作るためにデータを使いこなすことの重要性と、Cookieレスの市場にどのようにアプローチするかについてお話しいただきました。
「データを使いこなす上で『データのサイロ化』が障害となります。デバイスの多様化やオンライン/オフラインのサービス展開によってデータが分断されてしまい、ユーザー様が何に価値を感じているかが可視化しにくくなっています。」
この課題を解決するためにハッシュ化されたメールアドレスや申込ID、ユーザーのIDで紐付けを行うことでデータの分断を防ぎ、LTVの可視化や広告媒体へ成果を返しPDCAを回すことが可能になると説明し、「こういったお客様にどのタイミングで来てほしいかをプラットフォーマーに伝えることが重要です。」と強調しました。
次にCookieレスの壁を乗り越えて最適なデータ環境を整えることの重要性に触れ、各プラットフォームのCookie規制などに、どうアプローチするかを説明しました。
「これらの課題に対して『やれること、やるべきこと』はたくさんありますが、世の中の方向性を見極めないと、違う方向の環境ができてしまう可能性があるため、フォアキャストではなく、バックキャストの考え方で進める必要があります。」
その上で、現在起きている世の中の動きとして、事業主のサーバーを経由してプラットフォーマーとやり取りをする技術である「サーバーサイドAPI」に対する各社の動きについて触れました。
「ポストCookie時代、やるべき課題が多くなりますが、プライバシーとパーソナライズのあるべき姿を描き、そこに繋がる一歩を踏み出すことが恒久的な対応になります」とまとめて終了となりました。
最後に
今回のカンファレンスは初のオンライン開催となり、全国各地から多くの方にご視聴いただきました。
コロナウイルス感染拡大の状況下、業界問わずマーケティングの在り方が変わってきており、その中でデータを活用した今後の勝ち抜き方として、少しでも皆様のヒントになれたのであれば、喜ばしく思います。
今後もアドエビスは皆様のマーケティング活動の一助となるため、より良いサービスを提供してまいります。
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