マーケティングの施策を考える上で、ブランディングの視点が欠けてしまってはなりません。当然ながら、どんな広告にするかを企画する上で、商品、またはサービスのブランディング戦略についても理解している必要があるでしょう。
しかし、改めて広告とブランディングの何が違うかと問われても、すぐにスラスラと答えられませんよね?
マーケティングとブランディングは白か黒で分けられるような、まったく別のものではなく、しっかりと繋がり結びつく、切っても切り離せないものです。
今回は、マーケティングの中でも広告に焦点を当てて、ブランディングと広告の違いを考えていきましょう。
ブランドとは何か?
アドエビスマーケラボでは何度もテーマに取り上げていますが、まず「ブランド」とはいったい何でしょうか?
参考になる言葉として、クラフトビールブランドのブリュードッグの創業者、ジェームズ・ワット氏は以下のように述べています。
出典:Oktoberfest beer barrel and beer glasses with wheat and hops on wooden table
ブランドとは、自分で操ることのできない、人の頭の中にある感情的な反応のこと。つまり、認知の問題なのだ。自分がどう思っているかではなく、他人にどう見られているかが問題になる。
出典:「ビジネス・フォー・パンクス」 著:ジェームズ・ワット
ブランドの正体は、「人の頭の中にある感情的な反応」だと言うのです。そして以前、この言葉を参考に筆者はブランドを「顧客のイメージ」だと言い換えました。
また、一般的に「ブランド」という言葉は家畜に焼印を押す行為を指しました。今でも英語のbrandは、商標・銘柄といった意味以外に、「焼印」といった意味を持ちます。つまり「ブランド」とは、もともと“他者のもの”と“自分たちのもの”を区別することです。
そして今では企業・商品が他とは違うことを表す“何か”になりました。“何か”と書いたのは、ブランドは名称・ロゴ・フォント・デザインなど、企業・商品を表すあらゆるものに関わるからです。
ではブランディングとは何か?
では、いったいブランディングとは何でしょうか?
ビジネスの世界においては、ただ“他者のもの”と“自分たちのもの”を区別するだけで終わってしまっては何も生まれません。
顧客が、自社の商品・サービスのファンになってくれるよう働きかける必要があります。
以前、筆者はこのような言葉でブランディングを説明しました。
ブランディングとは、「人々が企業・商品に抱く良いイメージを醸成すること」と説明できます。あえて醸成という言葉を使ったのは、「ローマは一日にしてならず」というように、ブランディングも短い時間ではできないからです。
現代ではインターネットを通じたブランディングも加わり、オンライン・オフライン双方で顧客とのタッチポイントを作り、顧客の良いイメージを醸成していくこと(=ブランディング)が求められるようになりました。
ブランディングと広告の違いとは?
ブランディングについてここまで見てきましたが、それでは広告との違いはどこにあるのでしょうか?
前提として、「広告」という言葉の意味自体が時代の移り変わりと共に変化していることと、「ブランディング広告」といった言葉もあるように、両者が明確に分けられるものではないといったことがあります。(例えば高級ブランドの雑誌広告は、ブランディング色が強いですよね。)
ただ〇〇広告と名前がつくものを思い浮かべると、交通広告・新聞広告・雑誌広告・車内広告など、基本的にはなるべく多くの人々の目につく場所で商品・サービスの利点を訴求していることがわかります。
出典:View of Times Square at night in New York City with blurred effect
広告が持つ本来の意味は「広く告げる、知らせる。」にあり、いわば広告の役割は、商品・サービスの利点を広く世間に対して告げることにあります。
一方でブランディングは「良いイメージを醸成すること」と前述しましたが、「広く告げる、知らせる。」だけで終わってしまっては、なかなか良いイメージを醸成することは難しいものがあり、より時間がかかるものです。
(広告も含む)顧客とのあらゆるタッチポイントにおいて、ブランドストーリーを伝えたり、世界観を伝えたり、時にはブランドが持つ哲学をメッセージに込めたりしながら、時間をかけて顧客のイメージを醸成していくことが、ブランディングだと言えるのではないでしょうか?
ブランディングと広告はどちらが先?
では視点を変えて、ブランディングと広告はどちらを先に行うべきでしょうか?
「ブランディング22の法則」にはこんなことが書かれています。
広告は強力なツールであるが、それは生まれたてのブランドにリーダーシップを築くためではなく、いったん確立したリーダーシップを維持するためのツールである。
補足すると、顧客の脳内に何もイメージが浮かばない新しい商品の場合、広告に力を入れる前にパブリシティなどを駆使して認知を広げ、ブランディングに注力することがまず大事であり、広告は自らが作り出した市場でリーダーになった後、その状況を維持するために使うべき・・・というのが本書の考え方です。
時間がかかるはずのブランディングの方が先、というのは矛盾しているようにも受け取れますが、顧客がブランドを認知し好感を持ってくれる前に、商品・サービスの利点を「広く告げる、知らせる。」のは順番が逆なのかもしれません。(詳しくはこちらにまとめてあります。)
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