急速に拡大するEC/D2C市場。予測が難しい新時代を勝ち抜くために、いま、そしてこれからすべきこととは何でしょうか?
この問いの答えを探すべく、2021年5月25日(火)・26日(水)の2日間にわたりオンラインイベント「NEXT STAGE of EC~国内屈指のトップマーケターたちが見据える、ECの未来~」が開催されました。
今回のイベントでは、ECシフト時代のなかで新たなビジネスチャンスが生まれるとともに、さらなる市場の競争激化が見込まれる「EC/D2C業界の未来」をテーマに、マーケティングの最前線で活躍するトップマーケター及びリーダーが登壇しました。いま重要と考えるマーケティング戦略と成功事例、今後必要となる新たなチャレンジについて語り尽くします。
それでは、DAY2のプログラムをレポートしていきたいと思います。
基調講演についてはDAY1のレポートをご覧ください。
市場のリーダーたちが、いま見据えているそれぞれの未来
まずは各社がいま見据えているNEXT STAGEについて話が始まりました。木下氏はグローバル展開を見据えつつ、1,000億円規模の企業を目指していると話します。
木下氏:「次のステージとして100億円の事業を10個持った、計1,000億円規模の企業を目指しています。大ヒット商品ありきでブランドを分けていきながら、コングロマリット方式でグローバルなD2C企業になっていこうと考えています」
野口氏も同じようにグローバル展開を見据えていると話しますが、その道の選び方には木下氏との違いがありました。
野口氏:「僕らはBULK HOMMEというブランドをグローバルナンバーワンにすることに、すごく強いこだわりを持っています。マルチブランド化もせずに、BULK HOMMEのワンブランドでグローバルを目指していくというのが初志であり初心であり、次に目指すステージです」
次第に話題は今後「オンラインに特化するべきか」へと移っていきます。木下氏と野口氏がそれぞれ別々の視線から話を展開してくれました。
木下氏はオンラインの上限は20年間上がり続けていると話し、「他のメディアやオフラインへ行くよりはオンラインに特化している方が効率的であると今は判断しています」と語りました。
一方で野口氏は、オンラインとオフラインという両方の最大公約数的なブランドを作りたいと話し、オンラインでユニットエコノミクスが成立したあとに、インバウンドで問い合わせが入るオフラインへの循環が大きいと語りました。
そして、それぞれが重要視しているマーケティング戦略や組織戦略についても語ってくださいました。木下氏は組織を作る上で2つの人材が必要であると説きます。
木下氏:「1つはゼロから立ち上げていく起業家資質な人材。もう1つはその起業家が作った戦略などを形にしてブラッシュアップしていく、優れた実務家資質な人材です。組織戦略として取り組んでいることは、人間がよりクリエイティブな仕事に集中できる環境づくりですね」
野口氏は長期戦略への姿勢について語ります。
野口氏:「長期的に見て、一番勝率の高いブランド設計をやり直していきます。製品企画ではワンブランドの中でも一定数の新製品をリリースしていく計画を立てており、ゼロスタートとなる海外進出では媒体選定など細かいアイデア出しからやっています。このように動いていきながら、一点突破型のシェア獲得から、シェアを維持する構造へと変化していきます」
最後にお二人からリーダーとして市場を守り、そして広げていこうとする力強い言葉があり、セッションは無事エンディングを迎えました。
“好きという価値観”で繋がるコミュニティブランド戦略
お客様との間で行われる企業活動を、データとして繋げていくコミュニティデザイン部に所属している矢嶋氏からは、コミュニティマーケティングについて共有がありました。
まず矢嶋氏はBEAMSの店舗やECの在庫をデータ化して統一することで、シームレスな動きができるようになったオムニチャネルの活用事例を教えてくれました。
「オンライン上で商品を予約して、店舗で試着していただく。またECでの注文を店舗の在庫で対応することもあります。ECとリアル店舗の間で相互に在庫を取り寄せ合うことで、シームレスな顧客体験が提供できます」
そして矢嶋氏から今回のテーマである「Staffの魅力で売る」取り組みの紹介がありました。オンラインとオフラインを繋ぐ目的で以下の4つの取り組みをしているそうです。
- 商品を着用した「スタイリング」のコンテンツ
- 平置きした商品の画像で提案する「フォトログ」
- 商品を起承転結でご紹介する「ブログ」
- 実際の接客のように臨場感のある「動画」コンテンツ
「昨年からこういった活動を積極的に取り組み、お客様からの反響を非常に強く感じています。実に7割近くものお客様が、ご購入の際の判断材料に上記のコンテンツを活用してくださっていて、昨年の4月・5月に関しましては200%を超える高い成長となりました」
最後に矢嶋氏はBtoC領域におけるブランド・マーケティングが多層化していると語り、コミュニティにより生まれるブランドに対する熱量は、リアルだけでなくネットを通じてお客様に伝わると話しました。
そして最後に、今後の展望について以下のように締めくくりました。
「お客様の共感や信頼を強めていくためにも、スタッフとお客様とのコミュニティを育てていきたいと考えています。これからはファンと企業が“好きという価値観”でつながるコミュニティブランド戦略が、非常に重要なキーワードになっていると考えています」
SNSを活用したファンマーケティングにより培われる、真のブランド力
DINETTE(ディネット)からは尾﨑氏と斎藤氏の二人が登壇。代表の尾﨑氏からはDINETTEが月商1億円到達した背景やSNSを通じた製品開発プロセス・今後の展望を、デジタルマーケティングを統括している斉藤氏からは広告戦略について共有がありました。
2017年に美容メディア「DINETTE」、2019年にはコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP(フィービービューティアップ)」を立ち上げた尾﨑氏。急成長しているコスメブランドへのこだわりをこう語ります。
「友達に『悩みはある?』と尋ねたときに出てくる答えよりも、もっと深い、深層心理に近い答えをSNSを通して集めています。私たちはその答えをデータ化することで、商品開発に活かしています」
斉藤氏からは、広告戦略の中でも、まだファンになっていない方に向けて行った施策について話がありました。CRMの施策については集客よりエンゲージメントを重視し、お客様を主体にするという点を大事にしていると語ります。
「RFM※の指標を基に動いていて、数字が落ちる箇所を特定、または予想した上で数値の改善を設計しています。お客様のリストを集め、直接アプローチできる状態を作ることで攻め入ることができるというスタンスです」
※RFM=顧客分析の一種。最近の購入日、来店頻度、購入金額の3つの指標で顧客をランク付けする分析手法。
さらに尾﨑氏からファンコミュニケーションについての話があり、お客様とのコミュニケーションへの徹底がブランディングに繋がるという言葉がありました。
最後に尾﨑氏は今後の展開についてこう語ります。
「タイミングはまだ決まっていないのですがAmazonや楽天などのモールを縮小し、自社ECを強化していきます。またオフラインでも直営店を10店舗ほど出店したいと思っています。さらに、今後はグローバルブランドとなることを目標として掲げています」
「日本を代表するコスメブランドになれるように頑張りたい」という宣言で幕を閉じたDINETTE社のセッション。今年の秋、直営店第一号が有楽町にてスタート予定とのことで、期待に胸が躍ります。
さて「NEXT STAGE of EC」DAY2のイベントレポートはここまでになります。
2日間にわたって開催した本イベントが、みなさまの事業に少しでもお役立ていただければ幸いです。
8月31日までは以下から期間限定でアーカイブ配信をご視聴できますので、この機会をぜひ逃さずにご覧くださいませ。
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