いわずと知れたSNSの大御所Facebook。ユーザー数は世界中で17億人を超え、現在では私たちの生活に欠かせない世界最大級のネットワークへと成長しました。
なかなか会えない中学や高校時代の友人でも、Facebookのおかげで近況を知ることができているという人も多いのではないでしょうか。
そして、Facebookは単なる友人や知人とのネットワークから、一大広告プラットフォームとして進化を遂げました。近年では、その進化に拍車がかかり、先日の米国時間2月23日にも、Facebookが新しい動画の最中に表示される広告である「動画ブレーク」のテストを開始するというニュースがありました。
Facebook上で視聴される動画コンテンツは、1日あたり合計で1億時間とも言われています。本稿では、そのFacebookでの動画コンテンツに着目しながら、動画マーケティングの今後について考えていきましょう。
1. Facebookの動画広告
サイバーエージェント社の発表によれば、2015年の動画広告市場は506億円規模にものぼり、前年比160%増と大きな成長率を示しました。また、今年2016年にはスマートフォンで再生される動画広告の比率が、市場の過半数を占めるようになり、それは2017年に1000億円、そして2020年には2000億円規模に到達すると見られています。
そのような状況のなか、動画広告に注力するのがFacebookです。
Facebookはすでに10億人近い数のモバイルユーザーを抱えているため、スマートフォン比率がますます高まっていくにつれて、動画プラットフォームとしてのFacebookの優位性もどんどん高まっていくことでしょう。
また、他の動画配信サイトと比べた場合、Facebookにおける動画配信の構造が有利という一面もあります。YouTubeを例にしてみると、ユーザーがプラットフォームで動画を視聴する場合、お目当ての動画を検索して視聴するという流れになります。例えば、「猫」というワードで検索すると、それに関連した動画を見ることができ、広告もそのワードに沿った「猫系」の広告が表示されます。
この場合、元々の猫好きにターゲットを絞った広告では、一定の効果が得られるものの、より潜在層に近い顧客(動画を見て初めて猫を飼いたいことに気づく人など)にはリーチすることは難しいかもしれません。
一方で、Facebookでは友達の近況を調べるためにフィードを流すように見ていると、動画が強制的に配信されます。もちろん、同社もある程度のターゲティングをして動画広告を配信していますが、構造上、動画を初めてみたときの「気づき」はFacebookの方が多そうです。
2. Facebookのライブ動画
2015年8月、Facebookはプラットフォームに新しい機能を追加しました。ユーザーが自分で撮影した生放送動画を配信できる「Live」機能です。それまでにも、世界ではYouTube、国内ではニコニコ動画などが生放送動画サービスを提供していましたが、これでFacebookもその分野に参入することになります。
この機能が追加された背景として、従来の「近況を友人にシェアしたい」というユーザーのニーズに応えることに加えて、プラットフォームで視聴された動画コンテンツの量をもっと増やしたいというFacebookの狙いもありました。登録や利用が無料のFacebookにとって、動画コンテンツからの広告収入は大きなマネタイズ方法の1つなのです。
冒頭で述べた「動画ブレーク」についても、同様の意図があります。Facebookでは今後、4分間以上の動画やライブ動画を配信するユーザーに対してマネタイズの手段を与えます。そこから得た広告収入の55%は動画の配信元に、残りの45%がFacebookに入る仕組みになっています。
さらに、Facebookは今年2月にスマートテレビ向けアプリのローンチを発表するなど、プラットフォーム上の動画コンテンツを増やすという同社の意気込みがうかがえます。
3. 動画マーケティングの可能性
動画には、ユーザーが視聴するうちに新しい「気づき」に出会うという魅力があります。その例が、以前もご紹介したオーストラリア発の「GetUp! Australia」という動画コンテンツです。
この動画では、ありふれたカップルの日常が映しだされます。しかし、映されるのはカップルの男性側だけで、もう一方の女性の姿はまったく見えないようになっています。動画のラストで男性がプロポーズするシーンになって初めて相手側の姿が映しだされますが、視聴者はその時に相手は女性ではなく、男性だったことに気づきます。
ありふれた日常を描いた後に「男性同士のカップルだった」ことを明かすことで、ゲイカップルも通常のカップルと変わらないのだ、という気づきを与えているのです。
このように気づきを与える動画マーケティングは、潜在層へのリーチに適したマーケティング方法だと言えます。潜在層顧客とは、ある商品やサービスに対するニーズにまだ気がついていない見込み客のことを指します。
つまり、既存の顧客ベースの維持だけではなく、新しい顧客を獲得したいと考えている企業にとって、動画マーケティングは非常に有効な手段です。
テクノロジーが発達する以前では、潜在層への影響度を計測することは困難でしたが、近年では「カスタマージャーニー分析」などの効果測定方法が開発されています。
カスタマージャーニー分析とは、例えば動画の視聴回数やバナーのクリック回数などの数値を、ユーザー横断的に「面」で捉えるのではなく、ある潜在顧客の行動を追跡して分析する方法で、「人を軸にした分析方法」です。
動画コンテンツが前より身近になり、モバイルの存在感がどんどん増していく今後、動画マーケティングの重要性も高まる可能性は非常に高いでしょう。
潜在層の影響度を計測するカスタマージャーニー分析も含め、今後の動画マーケティングの動向を注意して追っていく必要があります。
参考
Techcrunch
- 「Facebookが動画内に挿入できる広告ブレークを導入へ―、広告収益の55%がクリエイターのもとに」
- 「動画配信の拡大のため、Facebookはセットトップボックス向けアプリを開発中」
- 「Facebookがスマートテレビ向けアプリをローンチへ」
ARCC限定イベントへのご招待・限定コンテンツの配信・
新着記事の案内・イベント情報の先行配信など、特典が満載です。