オムニチャネルとは
2012年頃から日本でも注目度を高めてきたオムニチャネルですが、その実態を掴めていない方も多いのではないでしょうか?
近年注目を浴びているオムニチャネルは、マーケティングにおける新たな販売経路を開拓するためのキーワードといえます。オムニとは「すべて」「あらゆる」といった意味を持ちます。商品の販売において、実店舗やネットショップなどさまざまな接点=チャネルを一元化し、あらゆる形態で顧客がシームレスに商品を買ったり受け取ったりできるように仕組みを構築するのです。例えば、以下のような例が挙げられます。
- 実店舗とネットショップで在庫を共有し、アプリなどで店舗の在庫を確認できる
- 実店舗で在庫切れの商品でも、その場でネットショップを利用して注文する
- ネットショップで購入した商品を実店舗やコンビニで受け取る
- SNS上にネットショップのリンクを貼り、そのまま商品を購入する
- オンライン上で取り置きができる
このように、様々な先行事例もでてきました。記憶に新しい一件として、セブンイレブン鈴木会長の退任の際にも、改めてオムニチャネル構想が注目を集めました。
出典:Blur image. The supermarket convenience store inside.
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今回はそんなオムニチャネルのわかりやすい定義や意味を紐解きつつ、似たような言葉との違いから徐々に理解を深めていきましょう。
そもそもチャネルとは何か
こちらはTechTargetと言う海外メディアが提唱する、オムニチャネルの定義です。英語ですがシンプルに書かれているので、参考にしたいと思います。
Omnichannel (also spelled omni-channel) is a multichannel approach to sales that seeks to provide the customer with a seamless shopping experience
出典:TechTargetーDEFINITION omnichannel
ここではオムニチャネルが様々なアプローチを通じて、顧客に対してシームレスな購買体験(a seamless shopping experience)を提供することが謳われています。
厳密な定義は提唱する人によって若干異なります。ただ、オムニチャネルを語る上でベースになっているコンセプトは、この「シームレスな購買体験」にあります。
スマートフォンが私たちの生活に浸透した結果、多くの場合、私たちは24時間いつでもどこでもインターネットに繋がる環境にいます。
このことは、商品・サービスの提供側と顧客の接点が、店舗・カタログに限らずオンラインでも、そして様々なデバイスからでも、まさにシームレスに生まれることを意味しています。
オムニチャネルが目指す、シームレス(継ぎ目のない)顧客体験が実現されようとするのは、ある意味必然なのかもしれません。
オムニチャネルとマルチチャンネル・クロスチャネル・O2O?
オムニチャネルの定義が少しわかったところで、オムニチャネルと近い言葉をピックアップして違いを見ていきましょう。
2-1. オムニチャネルとマルチチャネル?
まずは「オムニチャネルとマルチチャネル」です。
言葉が誕生した順番は、マルチチャネルが先でした。店舗だけだったチャネルにカタログ・ネット通販といったチャネルが増えたことを意味しています。
オムニチャネルが目指すシームレスな顧客体験の考え方は、マルチチャネルにはありません。
2-2. オムニチャネルとクロスチャネル?
次は、「オムニチャネルとクロスチャネル」です。
クロスチャネルという言葉は、マルチチャネルが実現した結果として生まれる、チャネルを横断(cross)した顧客の購買プロセスを示唆します。
クロスチャネルで語られる購買プロセスには、カタログで限定商品を知って店舗で買ったり、ネット通販で予約した商品を店舗で受け取ったりといった例が挙げられます。
ただクロスチャネルの考えにはスマートフォンが前提にないので、オムニチャネルのような顧客体験はコンセプトにありません。
2-3. オムニチャネルとO2O?
最後に、「オムニチャネルとO2O」です。
O2Oは「Online to Offline」なので、オンラインでのアプローチが、オフライン(主に店舗)の顧客の行動に影響を与えることを指します。
オムニチャネルはOnline to Offlineのような一方向的ではなく、包括的なコンセプトを持っているので、その点は大きく違うと言えますね。
なぜオムニチャネルが注目されるのか?
出典:3d small person thinking with a large question mark. 3d image. Isolated white background
オムニチャネルを導入することによって、実店舗だけではなくネットショップでの買い物も簡単にできるようになります。そして、オンラインを通じてどのルートからもつながることができるというオムニチャネルの手法は、さまざまな購入方法の中から顧客に都合の良い方法を選ぶことを可能にします。
これにより、顧客の利便性が格段にアップするのです。さらに小売側でもスムーズな商品流通が実現し、在庫切れなどの販売への障害をなくして適切に商品を売ることにつながります。
オムニチャネルのおすすめポイント
出典:3d small people with a exclamation mark. 3d image. Isolated white background.
では、オムニチャネルの導入がおすすめな理由を挙げていきます。
- 顧客情報を共有して的確な対応ができる
実店舗やネットショップなど複数のチャネルは、それぞれに顧客とつながりを持ち、購入履歴や好みの傾向などをキャッチしています。オムニチャネルを導入することでこの顧客情報をチャネルごとに共有でき、的確な販売促進ができるようになるのです。 - 顧客のニーズに幅広く応えることができる
オムニチャネルの導入で、顧客は複数のチャネルから商品を購入できるようになります。また、受け取りも都合の良い方法を選べて、さまざまなニーズに幅広く応えられるようになるわけです。 - 売り逃すことがない
たとえば実店舗で在庫がなかった場合、従来であれば顧客はそのまま諦めて帰ってしまうことになっていました。しかし、別の店舗やネットショップと在庫を共有し、その場でネットから注文できれば売り逃しを防ぐことが可能になるのです。
オムニチャネルで解決できるポイント
オムニチャネルを導入することで、企業や店舗が抱える以下のような問題を解決することができます。
- 売上の向上
上記のように顧客への的確な対応や販売機会の獲得などを実現することによって、売上を向上させることができます。 - 店舗のショールーム化を防ぐ
実店舗で商品を見て、価格の安いネットショップで購入するショールーム化も、オムニチャネル導入で解消することができます。 - チャネルごとの情報をまとめられる
チャネルごとの顧客情報をまとめられれば、顧客はどのチャネルでも的確な購買体験が可能になります。
オムニチャネルで成功させるためのポイント
オムニチャネルを導入して成功させるためには、顧客が触れる多くのチャネルでの動向を可視化する必要があります。チャネルの種類が数多く存在する中で、チャネルごとに顧客の割合や売上効果などを分析し、もっとも顧客とのつながりが深いアプローチの方法を探るのです。これにより、適切なオムニチャネルの導入方法が見えてくるでしょう。そして、チャネルごとに集めたデータをもとにして、適切にPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を構築することがカギになります。
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オムニチャネルが抱える2つの課題とは?
では、オムニチャネル構想を実現する上で、いったいどのような課題があるのでしょうか?
実を言うと、私は過去にリアル店舗とECサイトを同時運営した経験があります。その経験を通じて感じた、オムニチャネル化が進んだ際の課題は大きく2つだと考えています。
3-1. 顧客IDの統合
顧客に「シームレスな購買体験」を提供するオムニチャネルのコンセプトは、顧客IDの統合ができないと、机上の空論になります。
なぜなら、店舗で管理する顧客IDとオンラインで付与したIDが別だと、顧客への良いアプローチができないからです。それどころか、誤ったアプローチ方法で、顧客の購買体験を損なう可能性すらあります。
そのため、顧客IDの統合はクリアしなくてはならない大きな課題となります。
3-2. 在庫の一元管理
リアル店舗とECサイトの同時運営において、「あるはずの商品がない」状況は、顧客の不満足を生む大きな原因になります。
同時に、運営側としては在庫管理が杜撰になるため、二次的な問題に繋がりやすい側面もあります。そのため、在庫の一元管理は頭を悩ませる大きな課題です。
しかし、テクノロジーは必要に迫られて進化していくものです。2つの課題は決して小さくありませんが、テクノロジーの革新によって、より良い解決方法が必ず得られるでしょう。
実際の活用事例と社内体制の構築
では、実際にオムニチャネルを導入している企業がどのように活用しているのかを見ていきましょう。
- コンビニと提携したさまざまな小売店の商品をネットで注文し、コンビニで受け取る
- アプリを使用し、来店ごとにポイントやクーポンを付与して実店舗やネットショップで使用できるようにする
- ネットショップで得た顧客情報を実店舗でも参照し、アドバイスやおすすめを行う
これらの活用方法を実現するには、顧客がより企業と深くつながれるチャネルを突き止め、アプリやECサイト、POSなどのシステムをしっかりと構築することが大切です。
オムニチャネルの導入事例
オムニチャネルは名だたる大企業も注目し、SNSや自社アプリ、ECサイトを最大限に活用して独自のサービスを展開しています。こうした事例は、小売業界のみならず金融業界などにも広がっており、より快適な顧客体験を実現しているのです。
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オムニチャネルはマーケターの仕事をどう変えるのか?
出典:Business People Team Teamwork Cooperation Partnership Concept
それでは、オムニチャネルは私たちマーケターの仕事をどう変えていくのでしょうか?その点を考えてみましょう。
オムニチャネルは、店舗とネットの2軸で語られることが多いものの、SNS・デジタルサイネージ・ECサイト・WEBメディアなど、「あらゆる」顧客接点を持つことが本意です。
「あらゆる」となると、大企業でないと包括的で大きなマーケティング戦略の絵を描くことは難しいと想定されますが、複数の顧客接点からマーケティング戦略を考える必要性は、今後ますます高まることが予想されます。
これからのマーケターは、当然、WEBマーケティングだけではなく、リアルでのマーケティング経験も必要になりますし、マーケティングを体系的に理解していることも求められます。
つまり、様々なチャネルを横断してマーケティング戦略をつくる力が求められるでしょう。
今回のまとめ
オムニチャネルのコンセプトは壮大ですが、企業の規模や事業形態、マーケティング戦略においてできることを少しずつ進めることが大事です。
まずは実現できそうなことを小さくトライしてみて、しっかりと効果測定をしていきましょう。そして効果測定をする時は、ぜひアドエビスを思い出してくださいね。
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