人が意識できて言語化できることは僅か数%で、そのほとんどが言語化できない無意識だという話を聞いたことはありませんか?
マーケティングにおいて、顧客の声を聞くことが大事だとよく言われますが、無意識がほとんどを占める顧客の声(言葉)を聞いているだけでは、何が正しいのかを判断するのに心許ない気もしてきます。
ニューロマーケティングは、顧客の声を脳科学のアプローチで聞こうとするもので、実際には言葉にならない感覚や感情を知ろうとするものです。
今回は基礎知識を振り返りながら、ニューロマーケティングが注目された契機について知ることにしましょう。
ニューロマーケティングの基礎知識
ニューロマーケティングについて、前回、基本的なことを簡単にまとめたので、おさらいです。
ニューロ(neuro-)とは、日本語でいう「神経」にあたり、ニューロマーケティングを日本語で表現するなら「神経マーケティング」「心脳マーケティング」となります。
マーケティングにおける、特にリサーチ分野で活躍が期待されるものですが、脳科学のアプローチをとるためにアカデミックでありながらも、すでに日本企業も何社かビジネスとしてサービスを展開しています。
WEBカメラでリサーチ対象者の表情を読み取ったり、頭部につけるデバイスで脳波を読んだりすることで、例えば動画のようなクリエイティブを観たときの反応や脳の活動がわかります。(ここで言う「わかる」というのが、言葉を介さない非言語でのデータ取得である点がポイントです。)
ニューロマーケティングのコンセプトがうまく体現できれば、これからクリエイティブの改善はもちろん、ブランドイメージの調査からリブランディングの骨子づくりなど、様々な活用方法が実現できます。
ニューロマーケティングが注目を集めた契機
ニューロマーケティングの事例としてよくピックアップされるものに、コカコーラとペプシコーラの実験があります。
これは2004年に、「Neuron」という雑誌に掲載された論文で行われた実験で、この実験がニューロマーケティングの注目度を高めたきっかけと言っても過言ではないでしょう。
簡単に内容を紹介すると、コカコーラの絵を見てからコーラ(コカコーラかペプシコーラ、どちらかわからない)を飲むと、対象者の脳のとある部位に活動が見られた一方で、同じ条件でペプシコーラの絵を見せても、その活動は見られなかったというものです。
この結果から、研究者たちは「広告やブランディングは、生活者の商品への欲求に影響を及ぼす。」と結論づけました。
この研究が正しいとすると、「良い商品を作れば生活者に支持されて売れる。」といった考えは・・・間違いではありませんが、一方で「商品の質に関わらず、広告やブランディングがうまくいけば生活者の欲求は喚起できる。」とも言えます。
「Neuron」に掲載された論文は、こういった議論を呼び、ニューロマーケティングに注目を集めた一つの契機となりました。
ニューロマーケティング以前に何が大切か?
さて、ニューロマーケティングについて一つ詳しくなったところで、少し俯瞰して考えてみましょう。
ニューロマーケティングはあくまでリサーチ領域で活躍するものです。
ブランドが目指す方向を迷ったり、マーケターがクリエイティブの良し悪しを判断できなかったりする場合など、顧客の声にならない声を聞くために必要かもしれません。
しかし、あくまでリサーチのために使うものであり、マーケターを助けてくれますが、正解を教えてくれるわけではありません。その点は、従来のリサーチと変わりません。
私たちマーケターは、その点を忘れず、ニューロマーケティングのような新しい手法を積極的に取り入れつつ、人が心を動かされるクリエイティブやブランディングを、淡々と模索し続けていくことが大切です。
これは、これから新しいマーケティング手法が発明されても変わらないことでしょう。(おそらく、しばらくの間は・・・)
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