今までオムニチャネルの定義や、オムニチャネル戦略の概要についてお伝えしてきました。
今回は、オムニチャネル戦略を展開する国内企業の中で最も注目を集める企業=セブンイレブンについてお伝えしたいと思います。
多くの方がご存じかと思いますが、セブンイレブンはセブン&アイグループという流通グループに属する企業で、グループにはセブンイレブンの他にも大手企業が複数存在します。
そこで今回は、セブン&アイグループについて理解を深めながら、オムニチャネル戦略の全貌に迫っていきます。鈴木前会長の退任、オムニ7のローンチなど、動向が注目される中で改めて知っておきたいポイントを8つにまとめました。
1. 世界規模の売上を誇るセブン&アイグループ
前述した通り、セブン&アイグループ=正式名称「株式会社セブン&アイ・ホールディングス」は、セブンイレブン以外にスーパーや百貨店、金融、フードサービスなど、様々な事業を展開する会社の複合体です。
出典:https://www.7andi.com/company/organization.html
「え?あの会社ってセブン&アイグループだったの?」と驚く方もいるかもしれません。以下に、主なグループ会社を図解したものです。こうして見ると、国内はおろか世界でも有数の巨大な流通を誇るグループだということは容易に想像できます。
出典:
ネットショップ担当者フォーラム「セブン&アイグループのオムニチャネル戦略が描く、異業態連携による“新たな買い物体験”」の図を元に編集
それもそのはず、すでにセブン&アイグループの総売上規模は10兆を超えており、この売上規模はウォルマートに次ぐ世界2位と言われています。
2. オムニチャネル戦略におけるセブン&アイグループの強み
セブン&アイグループのオムニチャネル戦略における大きな強みは、セブンイレブンの国内店舗数にあります。以下は、その店舗数の推移を表したものです。
出典:
株式会社セブン-イレブン・ジャパン「店舗数推移(国内)」
セブンイレブンだけで、2016年現在2万店に届きそうな勢いで店舗数を伸ばしています。
国内ではファミリーマートを抑えて第1位の店舗数で、さらにグループ各社が持つ店舗があります。国内でオムニチャネル戦略を展開するにあたり、この店舗数が大いなる強みになることは自明のことだと言ってよいでしょう。
3. セブン&アイグループのオンライン戦略
セブン&アイグループのオンライン戦略の中核にはオムニ7があり、さらにグループ共通アプリとしてオムニ7アプリがあります。
その上、各流通グループが各々のアプリを持っているので、リアルでの顧客接点と同様に、オンラインでも多くの顧客接点を有しています。それぞれ見ていきましょう。
3-1. ポータルサイト/総合ECサイト:オムニ7
ポータルサイト/総合ECサイト:オムニ7
http://www.omni7.jp/top/
2015年11月にローンチしたオムニ7は、ポータルサイトかつ総合ECサイトでもあり、セブン&アイグループのオムニチャネル戦略の中核となる存在だと言えるでしょう。
現時点では、セブンネットショッピングをはじめとした、以下の合計9つのサービスを利用することができます。
- セブンネットショッピング
- 西武・そごうのe.デパート
- イトーヨーカドー ネット通販
- アカチャンホンポ ネット通販
- ロフトネットストア
- セブン‐イレブンのお食事お届けサービス セブンミール
- イトーヨーカドーネットスーパー
- デニーズ出前サービス
- セブン旅ネットの旅行予約サービス
出典:http://www.omni7.jp/general/static/help11/
3-2. アプリ:オムニ7アプリ
アプリ:オムニ7アプリ
https://itunes.apple.com/jp/app/id641514745
オムニ7にはアプリも用意されています。頻度高く使用する場合は、スマートフォンから簡単にアクセスできるアプリが便利ですね。
- バーコード検索で商品チェックができる
- 無料Wi-Fiセブンスポットが回数無制限で利用できる
- nanaポイントがたまる・使える
上記3つのポイントも嬉しいポイントです。iOS・Android共にアプリが用意されているので、気になる方はチェックしてみてください。
4. セブンイレブン鈴木前会長が描いたオムニチャネル戦略
さて、ここまでオムニチャネル戦略の概要をご紹介しましたが、セブン&アイグループにおいてオムニチャネル戦略を最も強く提唱してきたのは、セブンイレブン鈴木前会長でした。
ここでは鈴木前会長が著書で語っている4つの視点から、同氏が描いたオムニチャネル戦略を紐解いていきたいと思います。
4-1. オムニチャネルは顧客戦略
鈴木前会長は、オムニチャネルは流通のチャネル戦略だと捉えられがちだとした上で、以下ように語っています。
一方、私はグループが持つさまざまなシステム、店舗網、販売方法など、すべての事業インフラを、ネットとリアルの境目も越えて、顧客を起点にして新たに組み直していくという顧客戦略だと考えている。
出典:「挑戦 我がロマン」日経ビジネス人文庫 著:鈴木敏文
オムニチャネル戦略と言うと、ともすれば企業のマーケター視点で、どのように顧客にアプローチするのか?といった話になりがちです。しかし、鈴木前会長が描いていたオムニチャネルは顧客視点から構想されています。
冒頭でご紹介したセブン&アイグループの組織図も、「お客様」が最上部にありました。こういった点からも、「オムニチャネル戦略は顧客戦略」とする考えが戦略のベースに見受けられます。
4-2. “ご用聞き”が取り払うリアル店舗とネットの壁
オムニチャネル戦略のベースには「シームレスな購買体験」というコンセプトがあると、以前お伝えしました。しかし、口で言うのは簡単ですが、リアル店舗とネットの間に大きな壁があるのは事実です。
ただ、鈴木前会長はこの壁を取り払うイメージを持っていました。「例えば」と前置きした上で以下のように語っています。
自宅で一人暮らしをしているお年寄りのもとへ、近くのセブン-イレブンの店舗スタッフが、食事宅配サービスのセブンミールの弁当や、注文の商品を届けに伺う。その際、会話の中から近々、息子さんや娘さんの家族が集まることがわかった。そこで、持参したネット端末を使い、グループ各社が扱う商品の中からニーズに最適な商品を紹介し、その場で注文を受け付ける。
出典:「挑戦 我がロマン」日経ビジネス人文庫 著:鈴木敏文
鈴木前会長は、このように店舗スタッフが真摯に顧客のニーズを聞く姿勢を貫くことで、「大きな壁」を取り払えると考えていました。
オムニチャネル戦略におけるセブン&アイグループの強みは、店舗数だと前述しました。しかし当然それだけではなく、このような地道な活動を実現しようとする、企業の考え方・哲学・信念にも大きな強みがあるはずです。
4-3. オムニチャネル戦略におけるリアル店舗の重要性
デジタルマーケティングおける顧客とのタッチポイントは増え続けていますが、顧客のニーズを直接聞いてサービスを提供してくれるリアル店舗は、今後も顧客にとって無くてはならない存在では無いでしょうか?
アメリカでも通販サイトAmazonが、セブン-イレブンの店舗に商品の受け渡し用ロッカーを設置しているように、ネット化が進むほど、リアル店舗の意味合いが大きくなっている。
出典:「挑戦 我がロマン」日経ビジネス人文庫 著:鈴木敏文
鈴木前会長は上記のように、ネット化が進む社会だからこそリアル店舗ができるサービスを重視していました。また、顧客にとってセブンイレブンが安心できるプラットフォームであり続けることが、オムニチャネル戦略を成功に導くポイントだとも考えていました。
5. セブン&アイグループのオムニチャネル戦略は成功の鍵は?
アドエビスマーケラボでは何度かオムニチャネル戦略の事例をご紹介してきましたが、セブン&アイグループのオムニチャネル戦略は、世界でも有数の取り組みです。
世界のオムニチャネル事例は、百貨店やアパレルメーカー、スターバックスのようなカフェなど、業態が絞られている中で展開していますが、世界2位の売上規模を誇るセブン&アイグループのグループ各社は業態も様々です。
それだけにリアル店舗とネットの壁を取り払っても、グループ各社と顧客との接点まで含めて包括的、かつ統合的なオムニチャネル戦略を描くのは至難の技だと言えます。
しかし、セブン&アイグループが顧客視点からオムニチャネル戦略を進化させ続けた結果、顧客、つまり私たちの生活にセブン&アイグループの取り組みが浸透していけば、それは成功と呼べるのではないでしょうか?
現状で判断することは難しくとも、セブン&アイグループが顧客視点に立ち続ければ、最適な答えを見つけていけるはずです。そういった意味では、「顧客視点」こそオムニチャネル戦略成功の鍵なのかもしれません。
今回のまとめ
今回は、セブン&アイグループのオムニチャネル戦略の知っておきたい8のポイントをお伝えしました。長文ご一読ありがとうございました。
セブン&アイグループが描くオムニチャネル戦略が、今後も様々な試行錯誤を繰り返しながら利便性を上げていく中で、どこまで顧客に支持され、私たちの生活に浸透していくのかを今後も見ていきたいと思います。
参考書籍:
「挑戦 我がロマン」日経ビジネス人文庫 著:鈴木 敏文
「変わる力 セブン-イレブン的思考法」朝日新聞出版 著:鈴木 敏文
「商売の原点」講談社 著:鈴木 敏文
「セブン&アイHLDGS.9兆円企業の秘密―世界最強オムニチャネルへの挑戦」 日本経済新聞出版社 著:朝永 久見雄
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