複数ブランドECの次の一手を支えるTSIのデータ一元管理

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nano universeMARGARET HOWELLをはじめとした数多くのアパレルブランドを取り扱うTSIホールディングス。

その傘下で各ブランドのWeb戦略・運営を手掛けるTSIに2017年に入社した竹山さんは、広告領域をメインに手掛けており、2018年に店舗・EC売上・CRM・広告・オウンドメディア等のデータ一元管理の環境を構築しました。

日々蓄積されるデータを見つめる竹山さんの目には、何が映っているのでしょうか。まず入社当時から振り返って、同社のCDP環境構築の原点を伺いました。
※本インタビューはオンラインで行っております。

すべてが手探りから始まったツール導入

広告代理店から転職して1年目はGoogle・Yahoo・Facebookといった広告媒体やGoogleアナリティクスのデータを見て、会員登録と売上を評価していました。メインの指標は今でも会員登録と売上ですが、当時は1社の広告代理店で27サイト分の広告運用をしていたので、手が回らない部分を一緒に対応しました。

各広告媒体やGoogleアナリティクス上の指標は伸びていたので1年目の結果としては良かったと思います。しかし当時から「お客様の情報をしっかり見た上で施策を評価したい」という気持ちがあったものの、広告経由で購入いただいた際の会員IDを取得しておらず、各媒体のデータの紐付けができていない状態で、思い描いていた形とは乖離がありました。

入社してすぐに課題を感じていた竹山さん。どのような紆余曲折を経て現在の環境を構築するに至ったのでしょうか。そこは竹山さんにとっては未知の領域でした。

最初は完全に手探り状態でした。具体的なデータ連携に至るまでにどういうプロセスがあって何をやればいい、どの会社さんとタッグを組めばいいかが正直分かっていませんでした。

もともと広告効果測定は必要だと感じていたため分析ツールの予算は取っていたのですが、会社承認を得るために説明をすると「単発ではなく色々なツールと絡めて何かできないか」と言われました。

そこで同じタイミングで使う予定だったGoogleアナリティクス360はGoogle BigQueryが使えるので、アナリティクスのデータと、AD EBiSのデータ、ECサイトや店舗の購買データを共通のキーを取得した状態でGoogle BigQueryに流し込めば、課題の解決になると思い提案しました。

提案が通り2018年10月からプロジェクトがスタートしたものの、Google BigQueryからデータを抽出するためにはSQLという言語を使う必要があります。データ抽出も一人で担当していた竹山さんに苦労は無かったのでしょうか。伺ったところ竹山さんの人となりが垣間見えました。

参考書があったので、それを書き写して理解を深めていきました。分からないことが分かるようになるのは楽しめるタイプなのと、何より自分のスキルが高まっている実感がありました。

それまではExcelで共通キーを紐づけて、マクロや関数を組んでいたのですが、それがすごく手間だと思っていました。SQLも何行にもなると結構大変ですけど、一回やってしまえば日付を変えるだけですぐ結果を出せて、工数が減らせるところに感動を覚えたので、それが自分でやっていくモチベーションになりました。

協力会社との出会いや新しい学びへの探究心からデータ一元管理の環境を構築した竹山さんは、売上増加に繋げるために次のステップに進みます。

成功も失敗も共有してグループを越えて施策考案ができるように

CDP環境を構築することで徐々にお客様の情報が見えてくるようになりました。例えば広告経由の初回購入の60%がGoogleショッピングであることが分かりましたし、あるサイトではCriteoなどのレコメンドする広告を閲覧した人が実店舗に来店して購入する流れが確認できたので、広告配信の強化ポイントを見つけることに繋がっています。

データの収集から分析、施策への活用まで当初ほぼ一人で行っていたそうですが、最近ではグループ会社の各EC担当の方によるデータを活用した施策立案が増えてきています。

TSIはMix.TokyoというECモールを運営しており、そこは自社の広告予算費用で柔軟に施策が打てます。施策を細かく試して、成功も失敗も事例を作ってグループ会社に「こういうことができますよ」といった施策をお伝えしました。

そうすることで、「何回も買ってくださるお客様には、検索した時に広告を配信しない」とか、「半年以内に5万円以上購入している方だけにこのバナーを当てましょう」といった要望が上がってきています。

施策の大小はありますが、今までなかった声が出てくるようになったので単純に嬉しいですし、ホールディングス全体に意識が浸透した実感が湧きました。

データを共通言語にしたコミュニケーションに苦悩している企業が多い中、事例を通じてグループ会社とのリレーションをより強固なものにしました。実際にどのような結果に繋がったのでしょうか。直近で印象的だった施策を伺いました。

デシル分析でお客様の年間購入額を10グループに分けて、平均の購入金額が高い3グループに絞って、商品の単品訴求やキャンペーン情報をセグメントし広告配信を行いました。その結果、上位3セグメントで売上前年比250%というインパクトのある数字を残すことができました。

広告領域以外でもデータの活用を進めたい

株式会社TSI デジタルビジネスDiv. デジタルマーケティングDept デジタルAD Sec Section長 竹山健司様

前職でデータを扱うことに出会い、改善を繰り返すことで目に見えて効果が出てくるところにデータマーケティングの醍醐味があると語る竹山さん。

「お客様の情報をしっかり見た上で施策を評価したい」という思いを形と結果で実現した今、社内データ活用の展望をどのように見ているのでしょうか。

広告領域では予測モデルを活用し、リピート率が高そうなセグメントに広告配信を行うなど、どんどん効果検証を図っていきたいと考えています。

また、現在の広告領域にとどまらず、オウンドメディアやアプリといった担当や領域を横断してデータを活用したいと思っています。オウンドメディアまでの領域横断のデータ活用は、来店売上に貢献しているデジタルメディアの可視化を行いたいです。

例えばアプリでは商品を訴求した時にアプリプッシュが出るのですが、そのアプリプッシュで商品詳細ページまで行って、実際に購入に繋がったかというデータは出しています。しかし「アプリプッシュの効果があったのでサイトのトップページでバナーとして作りましょう!」といった提案まではできていないので、今後力を入れたいです。

そのために各分野の担当と連携をしっかり取って進めてデータを元にした施策の実行に繋げたいと思います。

データの一元管理をする環境構築を行う上で大切なこととして、まず何を成し遂げたいのかを明確化して、導入するだけで満足せず、目的に向かってデータをしっかり活用すること、と語った竹山さん。

連携させるだけで終わることはなく、泥臭く時間をかけて作業や施策を進めることが多いデータマーケティング。

そこにはお客様の情報と全力で向き合い、成果を出すためのデータへの飽くなき探究心がありました。

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