「コンテンツよりもコンテクスト(文脈)」。
ていねい通販が考えるCRMの本質とは?

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「コンテンツよりもコンテクスト(文脈)」。ていねい通販が考えるCRMの本質とは?

「あんしんできる、やさしくなれる。」を掲げる「ていねい通販」。“すっぽん小町”や“高麗美人”といった商品が有名ですが、お客様への丁寧な対応や親密なコミュニケーションでも話題になることが多く、業界内でよく知られた存在でもあります。

「CRMの本質って、いったい何ですか?」

これは今回、私たちARCCが投げかけた問いですが、問いの背景には単なるテクニックや小手先のノウハウではなく、CRMに関する深い洞察を得たいという想いがありました。

そしてこの想いに応えてくださったのは、「ていねい通販」で採用からブランディング、そしてCRMまでを歴任する戸田 良輝さんです。

CRMで大事なのはコンテンツ以上に「コンテクスト(文脈)」

「CRMの本質とは何か?」この問いはすごく難しいのですが、私にとってCRMは人間関係をより良く構築するためのサポートでしかないと思っています。一対一の人間関係もそうですし、「会社と顧客」や「会社と社会」といった関係を良くしていくためのものです。

「コンテンツよりもコンテクスト(文脈)」。ていねい通販が考えるCRMの本質とは?
株式会社 生活総合サービス 戸田 良輝 様

そしてCRMにおいて、私はコンテンツ以上に「コンテクスト(文脈)」が大事だと考えます。例えば、あなたが咳をしていたとして、私がのど飴を渡すとしましょう。もし渡された飴が苦手なハッカ味だったとしても、のど飴をくれるという行為は嬉しいと思いませんか?

CRMも同じで、コンテンツ自体よりも「あなたがこうだったからこうしました」というコンテクストが強いほうが喜ばれると思っています。先ほどの例だと「咳をしていたあなたを心配して」というのがコンテクストで、ハッカ味の飴がコンテンツですね。

「コンテンツが重要」とはよく聞く話です。しかし戸田さんはコンテンツ以上に「コンテクスト(文脈)」が大事だと語ります。確かにハッカ味が苦手でも、その行為の背景にある思いやりを知ることで、顧客はその行為自体を嬉しく思うでしょう。

「人間関係をより良くするためのCRM」。そう語る戸田さんはメルマガを例に、自社で取り組んでいる事例を話してくれました。

メルマガの場合、年齢や属性を意識してコミュニケーションを取ることが一般的です。しかし、実はそのようなコミュニケーションより「タイミングのコミュニケーション」の方が開封率が良いし反響が多いんです。

例えば大阪で大雨が降ったとします。その大雨に対する気遣いをメールで送るというのがタイミングのコミュニケーションです。

あるいは災害救助法という強い災害が起こった場合に適用される法律があるのですが、その災害場所が特定された時に安否を気遣うお声がけをしたり、お客様が住んでいらっしゃる地域のお祭りやイベントにちょっと触れたり。これらは売上に直接貢献しないのですが、お客様の喜んでくださる声は増えるんです。

さらに戸田さんはCRMにおける顧客データの活用は、「タグ付け」に近いと言います。

最近では、広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」で取得した計測データを「DirectEngine」へと連携するというプレスリリースもありました。

「ていねい通販」上で得た顧客の行動履歴と購入情報を統合して、新たなCRM環境の構築と運用を始めています。

この連携の目的は、データから一人一人のお客様を想像することにあります。

「コンテンツよりもコンテクスト(文脈)」。ていねい通販が考えるCRMの本質とは?

「このお客様はこういうところを見てくださるな」とか「この人はこういう履歴があって、こういう興味があるはずだから、この声掛けをしたら喜んでいただけるな」といったように「タグ付け」を増やす。一人一人のお客様を深く想像することで、より良いコンテクストを生み出すことができると考えています。

CRMの根幹はマッチングと関係性の濃度

実は戸田さんのファーストキャリアはCRMではなく採用でした。採用活動を通じて就活生とコミュニケーションをとる経験から、次第に採用とCRMに重なる部分を感じたと言います。

当時の採用チームには新卒採用者が私以外にいないという状況でした。今でこそよく言われることですが、まだ「採用 ≒ マーケティング」という考え方が一般的ではない中、私は就活生への返信をオートリプライから1人1人に自分で返信するようにしました。

前任が4,000人のエントリーから3人採用という結果だったものを、戸田さんはエントリー数を100人弱まで抑えて同じく3人採用。手間はかかっても濃度が高いコミュニケーションを取ることを心がけて結果を出していきました。

私は採用活動で重要なのはマッチングだと思っていますが、それはていねい通販のCRMでも同じように意識していることです。ただ関係を続けるための延命措置ではなく、マッチングして関係性をより濃くしていく。これが私が考える採用活動、そしてCRMの根幹です。

「ていねい通販」のサブスクリプションの継続率は94%くらいですが、それでも毎月掛け算すると1年後に残るのは30%程度。だからこそ解約する人を止めるアクションに力を入れるより、残ってくださる人と濃いコミュニケーションを取ることを意識しています。

CRMを良くすることで幸せの総量を上げたい

「CRMを良くすれば日本中のWEBコミュニケーションが良くなっていく」。最後に戸田さんに今後やりたいことを聞くと、そのような答えが返ってきました。

お金もリソースも配分されてないケースが多いCRMの世界で、自分たちが経験してきたことを全部提供していきたい。そう語る戸田さんが見据える先には、日本のWEBコミュニケーションのこれからがありました。

よく「オンラインだと冷たい」と言われますが、若い世代からするとそういう感覚は無いと思っています。昔は普通に会っていたのが手紙になって、電話になって、メールやLINEになっただけで、WEBコミュニケーション自体に温度が乗らないはずはないと思います。

「コンテンツよりもコンテクスト(文脈)」。ていねい通販が考えるCRMの本質とは?

例えばサブスクリプションの場合、中止率が上がるという理由から「発送メール」を送らないと判断する会社もいますが、私たちは発送の10日前にメールを送っています。

それももともと無機質な文章でしたが、最後に追伸で季節の挨拶を入れてみるなどして、人の存在が感じられるメールにしました。

するとお客様から「わざわざ教えてくれてありがとう」や「まだ余っているから次を10日ほど遅らせてくれると助かるわ」といった返信をいただけるようになったのです。

きっとWEB上のあらゆる接点が優しいものになったら、オンラインの印象が変わっていくはず。まず影響力のある企業がメールの言葉一つ、お知らせ一つを質の高いものにしてCRMを良くしていくことで、WEBコミュニケーションの幸せの総量が上がっていくのではないでしょうか。

これを綺麗ごとだと言う人もいるでしょう。

しかし、戸田さんは「優しいお声がけをしていれば、それが自然と返ってくる」と言います。

戸田さんが実際に受け取ったお客様からのお手紙(内容)

時に冷たいと言われるインターネットの世界に人の存在を感じた時、私たちは優しい感情を抱けるのかもしれません。

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