「ソーシャルメディアマーケティングにスタンダードを創る」
このビジョンを掲げてSNSマーケティングに取り組む株式会社ホットリンク。そんな同社のマーケティング部リーダー、朝山 高至さんは著書※の中で、「UDSSAS(ウドサス)」というInstagram世代の購買行動プロセスを提唱しています。
UDSSASの起点となる「U」はUGC、つまりユーザー投稿。UGCを継続的に生み出して、購買行動プロセス(UDSSAS)を推進するために、どんな方法があるのでしょうか。
この問いの答えを知るべく、今回は朝山さんに詳しくお話を伺いました。まずは前段として、Instagramが目指す今後の方向性について紐解いていきましょう。
※朝山さんの著者:『ゼロからわかるビジネスInstagram: 結果につながるSNS時代のマーケティング戦略』。
「発見型コマース」を目指すInstagram
「リール(Reels)」という60秒以内の短尺動画機能があるのですが、Instagramはそのタブをフッターのど真ん中に置くほど力を入れて取り組んでいます。それだけではなく、ハッシュタグの検索結果や、発見タブのおすすめ、ホーム画面のタイムラインにもリールが出てきます。
同時にInstagramは、リールで動画が作れるクリエイターを全力で集めようとしています。このようなクリエイターを集めようとする動きは、TikTokやYouTubeも同様ですね。なぜInstagramやTikTokのようなプラットフォームがクリエイターを集めるのかと言うと、ユーザーの滞在時間を伸ばすことができるからです。
良いクリエイターが作る良いコンテンツによってユーザーの滞在時間が伸び、結果的にクリエイターの収益化も進むし、プラットフォーム側も広告の面が増えるので売上を伸ばせるという構造になっています。
さらにInstagramはユーザーの滞在時間を伸ばすと同時に、Instagram内で購入が完結するコマース体験の強化に力を入れていると朝山さんは語ります。それも単なるコマースではなく「発見型コマース」であると言葉を続けました。
Instagramは最近、チェックアウト機能やコマース機能をどんどん実装しています。この機能が加わることで、ユーザーはInstagram上で購入が完結できますし、クリエイターは自らが起点となって商品を販売しやすくなります。
Instagramが作ろうとしているのは「発見型コマース」と呼ばれるような、コンテンツを見ている中で商品の情報が自然と入ってきて、気づいたら買い物に繋がっているという体験です。つまり従来の「検索して購入」ではなく、友達の近況やクリエイターの作った動画など、コンテンツが起点となったコマースの体験を生み出そうとしているのです。
Instagramが「発見型コマース」を目指す以上、ますます増していくコンテンツの重要度。今後はさらに企業からの発信ではなく、身近な友人のようなリアルな繋がりから発信されるコンテンツ、つまりUGC※の影響力が強いと話す朝山さん。次章では朝山さんが提唱するUGCを起点とした『UDSSAS(ウドサス)』についてお話を聞いていきます。
※UGC:User Generated Content
「UDSSAS」の起点=UGCを生み出す方法とは?
繰り返しになりますが、朝山さんの著書 『ゼロからわかるビジネスInstagram: 結果につながるSNS時代のマーケティング戦略』には、Instagram世代の購買行動プロセスとして「UDSSAS(ウドサス)」が登場します。
※出典:『UDSSAS(ウドサス)とは』(株式会社ホットリンク)
UDSSASはUGC(ユーザーによる投稿)から始まりShare(共有)で終わり、そこで生まれたUGCがさらに伝搬していく循環型のサイクルですが、起点となるのは「UGC」。このUGCをいかに生み出すことができるかが肝になると朝山さんは説きます。
UGCを生み出すためには、顧客はそのブランドをどのような接点から想起しているのか、現状分析が必要です。ブランドを想起する入り口になるカテゴリのことを私たちは「カテゴリーエントリーポイント」と呼んでいて、5W1Hなどの様々な切り口から探っていきます。
※「カテゴリエントリーポイント」とは?
朝山さんはUGCを生み出した事例として、全米No.1ソーセージとして知られる「ジョンソンヴィル」の取り組みを教えてくださいました。
ジョンソンヴィルさんについてSNS上でタグ付けされた投稿を調べてみると、「アウトドア」や「バーベキュー」、「ご褒美、プチ贅沢」という切り口で、既にお客様の間で語られていることがわかりました。これらは今のお客様が求めていて相性が良いものなので、ブランドとの想起を引き続き強化していくよう推進していきます。
そして、ブランドの今後の戦略として、今はまだブランドとのひも付きが弱い新たなカテゴリーエントリーポイントにおけるブランド想起を強化していくため、どこの幹を太くしていくのかと全体を設計し、狙いを定めてUGCを創出することを目指していきます。
ジョンソンヴィルとの設計の際には、特に注力することになったカテゴリは複数になったと朝山さんは話します。今回はその中の1つの事例について具体的なお話をしていただきました。
ジョンソンヴィルさんでは「クリスマス」にジョンソンヴィルを思い出していただけるようなコミュニケーションをとりました。
クリスマス前からクリスマス料理系のレシピを開発して投稿をしていくと、投稿を見たお客様から「レシピを真似してみた」という新たなUGCを生み出すことができたので、次の動きとしてUGCに対して、ジョンソンヴィルの公式アカウントからリツイートやリポストをして拡散していきました。
UGCが起点となり循環が生み出されたことで、#クリスマスイブ #クリスマスディナー など、クリスマス関連の多くのビッグハッシュタグにおいて、公式からの投稿やUGCを含めてジョンソンヴィルについての投稿で溢れかえるという結果になりました。
朝山さんは、公式アカウントからの紹介でお客様が喜んでくれると、そこでまた新しい投稿が生まれ、どんどんUGCが増えていくという循環を作り出すことができると言います。またレシピ以外の取り組みでも同様に、「いかにユーザーが写真や動画を撮りたくなる状況を作り出すかが大事」と話を続けました。
投稿フォーマットをこちらで準備してあげたり、ブランドやプロダクトについて語れる”言葉”をお客様に先にお伝えするという方法もあります。言葉を得ることができると、お客様は各SNSでその言葉を使ってくれるようになります。
さらにプロダクトの中に、写真や動画に収めたくなる状況をこちらから作ってあげるという方法もあります。写真は完成された美しさが、動画は完成するまでの面白いプロセスや動きが求められます。この点を意識して、「シェアしたい!」と思ってもらえる状況を作ってあげられるのかというのが重要ですね。
分散型アーンドメディアを総合的に作っていく
朝山さんは最後に、SNSマーケティングにおける”呪縛”という言葉で、現状感じている課題を語ってくださいました。
マーケティングで言われるトリプルメディアには「オウンドメディア」と「ペイドメディア」※、そして「アーンドメディア」※があります。本来は、この3つを総合的にうまく活用すべきですが、「アーンドメディア」はなぜか忘れ去られているように感じます。
多くの場合、InstagramやTwitterといったソーシャルメディアをWebサイトや広告運用と同じ考えで捉え、「自分からの発信 = SNS活用」だと思ってしまいがちです。これはもはや呪縛ですね。
でも本来はオウンドメディアやペイドメディアだけではなく、アーンドメディアを活用することで自社ブランドが各SNSで語られている状況を作る必要があります。
この考え方を私たちは「分散型アーンドメディア」と呼んでいますが、ホットリンクがこれを総合的に作ることで、本当に価値のある商品を世の中に広めていくお手伝いをしていきたいと考えています。
本稿でご紹介した「UDSSAS」については、朝山さんの著書『ゼロからわかるビジネスInstagram: 結果につながるSNS時代のマーケティング戦略』により詳しく書いてあります。ご興味がある方は、ぜひお手にとっていただければと思います。
※ペイドメディア:企業が広告費を払って掲載する従来型のメディアのこと。
※アーンドメディア:ユーザーが情報の起点となる、ブログやSNSなどのメディアのこと。
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