「日本も店舗が増える可能性はあります」。デジタル消費の専門家が語る店舗の変化と未来予測を紐解く。

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2020年に端を発した新型コロナウィルスの影響により、私たちの生活様式の変化は様々な場面で起きています。

その変化は私たちが日常的に行う「買い物」にも影響を及ぼしていますが、具体的にはどのような変化が起きているのでしょうか。さらに店舗という場所は、「買い物の変化」を受けて、どのように変わっていくべきなのでしょうか。

この問いについて、今回は株式会社いつも 取締役副社長の望月 智之さんにお話をお聞きしました。

望月さんは『2025年、人は「買い物」をしなくなる』、そして新著『買い物ゼロ秒時代の未来地図』の著者でもある、まさにデジタル消費の専門家。まずは、私たちの買い物の変化について教えていただきます。

「買い物の変化」の根底にある2つの面倒

そもそもコロナ以前からスマートフォンが普及してデジタル化が進んだことで、消費者が「買い物プロセスがとにかく面倒」だと気づいたことが変化の根底にあると思います。

アメリカに6,7年前に行った時に、大手小売業の経営者の間でも有名な「全米小売業協会」主催のイベントに参加し、すでに店舗に人が来ないことが大きな課題として挙げられていました。もうそれを何年もやっています。

小売店舗への来店者数は年々減少傾向にある一方で、小売業の流通額は増え続けています。つまり消費は増え続けているのに、デジタル化が進んだためにお店に人が来ないという話。それでは、なぜ人々が店舗に来ないのかというと、結局は店舗で買い物をするのは面倒っていうことなんですよね。

望月さんは「店舗に行くのが面倒」という消費者心理を紐解きつつ、さらに買い物の変化について言及します。変化には、もう一つの「面倒」が大きく関与していました。

店舗のお客様アンケートでも、「店員さんと話すのが面倒」と答える方がよくいます。今はお客様の方が情報をたくさん持っているケースが多く、店員さんが寄ってきて話をされるのは面倒というわけです。

百貨店の店員さんに話を聞くと、実は3,4年前から「接客の仕方が変わってきた」と言います。「どの商品がいいですか?」と選び方の助言を求める人がほとんどいなくなり、「この商品どこに売っていますか?」といった買い方の質問ばかり。商品知識や選択基準はお客様の方が詳しいので、どんどんお客様主導へとなりつつあるのです。

株式会社いつも 望月 智之 様
株式会社いつも 望月 智之 様

つまり近年の買い物の変化には、実店舗に行くのは面倒だし、店員さんに会って話をするのも煩わしいといった「面倒」が根底にあります。それがコロナの影響で余計に店舗に行けなくなったことで、変化が加速したのだと思います。

これからの店舗に求められる新しい考えとは

新型コロナウィルスの影響は未だ世界各地で続いており、このまま今のライフスタイルに慣れていくと、人々は買い物をすべてECで完結して店舗に行かなくなるのかもしれません。

もし人々が本当に店舗に行かなくなるなら、事業者にとって店舗の必要性はなくなるのでしょうか。このような疑問に対して望月さんは、驚くべきことに今後の日本でも店舗が増えていく可能性があると言います。

日本もアメリカも店舗はどんどん減り続けていて、しばらくこの傾向は続くと予想されます。グローバルで見ても同じ減少傾向にあるのですが、中国だけは店舗が大量に増えています。この現象は、顧客体験を起点に考えるとわかりやすいですね。

例えばB to Bでも、ウェビナーやオンライン配信は顧客がちゃんと聞いてくれるか分からないと考えると、かつての展示会やリアルな場での商談の方が、簡単に顧客のエンゲージメントを作れました。

店舗も同じで、オンラインでお客様との関係性を高めようとしても限界があります。デジタルコンテンツに1億円かけるなら、1億円で店舗を作ってお客様に来ていただく方がいい。なぜならお客様の良い記憶や体験を作り、購買の確率を上げるには店舗の方が絶対にいいからです。

だから中国のようにデジタル化が進んでいる国の場合、どこにお金を使うかというと店舗に使います。事業者はお客様との関係構築や、商品の発見性を高めたいから店舗に投資するのです。

ECだと1,000万円使うか1億円使うかに差はもうありませんが、店舗はいくらでも伸び代があるしエンゲージメントはもっと高められる。中国の店舗が増えているのは、中国がデジタル化の先を行っているからだと思います。だから今後、日本でも店舗が増えていく可能性は十分あります。

さらに望月さんは従来の店舗と、これからの時代に求められる店舗について「消費以外の買い物の目的」をキーワードに解説を続けます。

従来の店舗は、言い換えるなら商品の置き場ですよね。基本的には商品がぎゅうぎゅうに詰まっていて、さらに店員さんも減らすとなると、Amazonの商品がただ棚に並んでるのと差はないです。

でも買い物の目的は「消費したい」とか「商品を手に入れたい」だけじゃありません。

例えば作業服・安全靴のワークマンさんは、店舗に来る人をカウントして様々なデータを調べた結果、誰と来たかによって滞在時間が違うことに気づいたそうです。一人で来る人に比べてカップルや家族の方が滞在時間が長いし、子どもがいるとさらに滞在時間が伸びる。それなら家族連れに来ていただき、子どもが欲しい商品を揃える方が良いはずです。

この「複数人で来た時の滞在時間」というのは店舗の価値です。Amazonを家族3人で見ませんよね。でも、店舗には子どもを連れて家族で来る。これはAmazonに対する明確な対抗策です。

さらにワークマンさんは返品をする際に、お客様になるべく店舗に来ていただきたいと考えています。そのためにアプリで該当商品がどの店舗にあるかを明らかにして、返品と同時に「店頭でサイズや色違いをお渡しできます」という見せ方をしています。

これもお客様に店舗に来ていただくことで、他の商品を見ていただいたり、エンゲージメントを上げることができるから。Amazonには絶対できないことです。

ただモノを買うだけなら、Amazonでワンクリックすればいい。しかし、人は買い物に消費以外の何かを求めているのは間違いありません。それは誰かと店を訪れて雰囲気を楽しむ行為だったり、会話を楽しむ時間だったりと様々です。

株式会社いつも 望月 智之 様

本来ならリアルな店舗にはデジタルの100倍の価値があるはずです。でも従来の店舗だと、Amazonの1ページビューも店舗の来店者数1人も一緒になってしまって、エンゲージメントを上げる設計ができていません。

並んでいる商品を早く買えればいいというような、ワンストップショッピング的な店舗ではなく、お客様が楽しんで喜んでもらえる店舗の方が強い。だからこそ、これからの店舗に商品をただ置く必要はあまりなくて、その店舗でどういう時間を過ごしてもらいたいかという考えが求められるのです。

「日本を代表するブランドをつくる」というミッションに向けて

ここまで消費者視点で見た買い物の変化、それに伴う店舗の変化についてお話を伺ってきました。さらに買い物はこの先どう変わるのか、望月さんに未来の変化についてもお聞きします。

未来では「意識した買い物」は、ほぼ無くなると思っています。「探す」という行為も、ほぼ無いはずです。AIによって買い物の「面倒」がもっとなくなった結果、店舗に来てECで買うという流れはあるはずですが、基本的には購入は全てECになると思います。

全ての買い物がECで行われてAIが商品をリコメンドすることが前提になると、Amazonや各SNSのようなプラットフォーム上で買う商品は、一定のアルゴリズムによって決まってしまいます。これはメーカーがお金を出しても変わらない不変のものになるでしょう。

そのような時代では、ブランドの第一想起を先にとるアプローチがますます重要になるはずです。例えば、ゆっくり話せるコーヒー屋さんに行こうとしてスターバックスを想起しない日本人はいないですよね。もし第一想起をとることができれば、もうアルゴリズムは関係ありません。アルゴリズムに支配される世界から抜け出せるのです。

今以上に「面倒」がなくなり、買い物も無意識で行うような未来。そのような未来を見据えながら、望月さんは現在どのような目標を掲げているのでしょうか。望月さんに今後の目標と構想をお聞きしました。

私たちはデジタルファーストのブランドを中心に、数年で200ブランドをM&Aするという目標を打ち出しています。これはデジタルで私たちがD2C・ECブランドを成長させられるスキルがあることと、さらにオフラインに店舗を出していき、それをグローバルに届けるという構想に基づいています。

私たちがD2C・ECブランドをM&Aしてちゃんと成果を出すことで、メーカーさんから「いつもさんは言うことと、やることが一致しているね」とご理解をいただけるはずです。なので、まずは一つのスタンダードを作っていくイメージですね。

さらにM&Aしたブランドから良いブランドをたくさん作り、その中から「日本を代表するブランドをつくる」というのが私と会社のミッションです。日本人が考える“ものづくり”や、その繊細さは、グローバルでも通用すると信じています。

望月さんの目には数多くのブランドを支援した経験に基づく明確な未来予測と、壮大な構想を裏打ちする確かな自信が宿っているように見えました。

※本稿でご紹介した買い物の変化は、望月さんの著書『買い物ゼロ秒時代の未来地図』により詳しく書いてあります。ご興味がある方は、ぜひお手にとっていただければと思います。

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