「2073年までに赤ちゃんが食べられるタオルを創る」を企業指針に掲げる、オーガニックコットン100%の今治タオル専門店「IKEUCHI ORGANIC」。商品の企画・縫製・販売まで一貫した丁寧なものづくりの姿勢は、個人のお客様だけでなく企業にも根強いファンを生んでいます。
そんな同社が運営するオウンドメディア『イケウチな人たち。』は、ローンチから2021年2月で丸2年が経ちました。
『イケウチな人たち。』の立ち上げ、そして現在も運営を担う広報部の牟田口 武志(むたぐち たけし)さんは、オウンドメディアの存在がブランドづくりを後押ししていると語ります。
今回は『イケウチな人たち。』の過去を振り返りながら、ブランドづくりで大切にしていることを牟田口さんにお聞きしました。
商品の魅力を伝えるだけではお客様の心は動かない
『イケウチな人たち。』立ち上げ以前から会社HP内に「社員紹介」の記事は掲載していたのですが、その時に感じたのは”コアなお客様(ファン)には届いているが、新規のお客様を生むほど情報が広がっていない”という課題です。
IKEUCHI ORGANICのビジョンに強く共感してくださるお客様をどう広げていくかと悩んだ末、考案したのがオウンドメディアの立ち上げでした。
また私たちにはBtoCだけでなくBtoBのお客様もいらっしゃるのですが、熱烈に好きでいてくださる取引先の方々や、ビジョンに共感してくださる方々と一緒に取り組みたかったというのが背景にあります。
BtoBのお客様との関係性を丁寧に伝えていくことで、私たちが望むお客様との出会いにつながるのではないかと考え『イケウチな人たち。』は生まれました。
立ち上げにあたり掲げたメディアコンセプトは「私たち(IKEUCHI ORGANIC)が好きな人たちと、これからの豊かさについて考えるウェブメディア」。自社商品の特徴や魅力を前面に押し出す発信ではなく、私たちが大切に想うお客様との関係性や、彼らのストーリーに主眼を置いたコンテンツづくりを進めていきました。
『イケウチな人たち。』に自社商品の魅力を伝える記事が少ない理由は、”それではお客様の心は動かない”と考えているからです。
池内の言葉に「我々がつくっているのはタオルではなく、物語である」というものがあるのですが、私たちはタオルを通じてお客様の物語(人生)をつくっていると捉えています。
素敵なお客様との関係性をメディアで伝えていくことによって、”IKEUCHI ORGANICのある暮らし”をイメージしていただけるのではないかと考えたのです。
『イケウチな人たち。』では、短期的なPV数や掲載本数といった目標は置いていないといいます。その代わり、記事がどれだけ法人の問い合わせに影響したかを見ています。
昨年(2020年)はコロナの影響が大きいため一概にメディアの影響とは言えませんが、2019年との比較でBtoBの新規問い合わせが1.6倍に増えました。数字に見えにくい面でも「ぜひ、IKEUCHIさんと一緒にやりたいです!」という風に、BtoBのお客様の温度感は高まった印象があります。
しかしオウンドメディアの運営は事業への貢献が数字で表しにくい側面もあり、経営陣に納得してもらえないケースも往々にしてあります。
牟田口さんは、あるイベントに代表・池内さんを招いた時のことを話してくださいました。
以前、noteさんが主催されるイベントにお招きいただいたことがありました。そこには、IKEUCHI ORGANICのファンの方々が大勢いらっしゃるだろうと予想し、代表の池内にも来るようにと声をかけていたんですね。
本来、市場調査を行うとIKEUCHI ORGANICの知名度は3%にも満たないのですが、なんとこのイベント内では90%以上もありました。
「IKEUCHI ORGANICをご存じの方はいますか?」という質問に、参加者の多くが手を挙げるものですから、代表の池内も驚いたことと思います。「こんなにファンがいるの!?」と。
実際に『イケウチの人たち。』の読者層を目で見て知っていただくことで、代表の池内には改めてオウンドメディアの存在意義を理解してもらったと感じています。
愛されるブランドはプロダクトの質が8割
IKEUCHI ORGANICでは、ブランドのファンを「年間何万円以上、商品を購入する人」というように定量的には定めていないといいます。
その代わり大事にしているのは、「IKEUCHI ORGANICを好きでいてくれる人」「ビジョンに共感してくれる人」「プロダクトを好きでいてくれる人」という3つの視点。「何でもいいからタオルが欲しい」ではなく、お客様が「イケウチオーガニック以外からタオルを購入する選択肢がない」という状態を目指していると言います。
そんな牟田口さんは、ブランドづくりで大切にしていることをこう語ります。
本質的には、目の前のお客様に向き合うことだと思っています。
お客様の期待を超える満足を作り出すことがまず第一かなと。そう考えると私たちの場合、軸となるのは「プロダクト」なんですよね。
メディアでどれだけ読者に響く言葉を発信していても、品質が良くなければお客様に喜んでもらえるわけがありません。ブランドの8割は、「プロダクトの質」だと考えています。
次に「あらゆる顧客接点でお客様の期待に応え続ける」ということ。最終的に「タオルを売る」に行き着くわけですが、お客様との接点はそれだけではありません。
『イケウチな人たち。』もそうですし、イベントで交流する、タオルを提供しているホテルやレストランで触れてもらうなど、接点はたくさん存在します。
全てのお客様とコミュニケーションをとることは難しいかもしれないですが、あらゆる顧客接点で誠実に丁寧に接する姿勢が大切です。お客様の期待に応え続けるために、自分たちの魅力や欠点も含めて、ありのままを伝えるようにしています。
最後に「濃いファンのコミュニティを育てていく」ということ。IKEUCHI ORGANICは店舗が3店舗しかないので、来店時にしか商品の体験ができないとなると、顧客体験が限定的になってしまいます。
そこでオンラインで交流会を催し、ファンの皆さんとの関係性を強くしているのです。
私たちのビジョンに共感してくださるお客様同士ですから、お互いに意気投合されるのも早いらしく、ファンの皆さんの輪が新しいお客様を連れてきてくださるのを実感しています。
長くご愛用していただくために、正しいタオルケアを伝えたい。
オンラインストアもあるものの、お客様に直接タオルを手にとってもらえる店舗はIKEUCHI ORGANICにとって欠かせない存在です。
しかし、2021年2月現在もまだ緊急事態宣言により外出が制限される状況。このまま、ただ手をこまねいているわけにはいきません。
コロナの影響を受けて、今はオンライン接客に力を入れています。店舗での接客と同じ質の体験を、いかにオンラインでお客様に提供するかということに試行錯誤していますね。今後はZoomのようなビデオ通話ツールを使っての接客をより仕組み化していきたいです。
当面の取り組みとしてオンライン接客を挙げた牟田口さん。しかし、ずっとやりたかったことがあると言います。
今後、タオルケアについての取り組みをはじめていきたいと思います。
お客様の声を聞いていると、1年でタオルが傷んでしまう方もいれば10年も触り心地が良いままでいる方がいて、これはなんの差だろうと気になっていたんですね。
原因を調べてみると、柔軟剤の使い方や水温・乾燥の仕方などにありました。
全てのお客様に感動のタオル体験を届けたいからこそ、品質の維持に大きな差を生んでしまう正しいタオルケアについて、これからは力を入れて伝えていきたいと思います。
「何でもいいからタオルが欲しい」。世の中には、そう考える人がほとんどかもしれません。
それでも、その人たちがいつか何かのきっかけでIKEUCHI ORGANICを知った時、きっと感動の体験に出会うことでしょう。その瞬間を作り、お客様との良い関係性を続けていくために、今日も牟田口さんは誠実に丁寧に取り組みを続けます。
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