2020年11月25日に開催した「AD EBiS Conference2020」は約1100名以上に申し込みいただきました。
基調講演として北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下様からお話がありました。同社は「美容・健康の悩みを解決する」スキンケア化粧品や健康食品の開発と、自社のECサイト「北の快適工房」で定期通販を行っており、30万人弱の顧客を抱えています。
また、社員数125名ながら東証一部上場しており、社員一人当たりの利益は2,332万円、ROEは54.2%と驚異的な数字となっているベンチャー企業です。(2020年3月13日時点)
少数精鋭でこれだけの結果を残せるのは、利益をとことん追求した広告運用に理由がありました。今回は、「利益を最大化させる広告運用の3つの極意」と題して45分ご講演いただきました。
目立つプロモーションと目立たないプロモーション
前段として通販におけるプロモーションマトリックスについてご説明いただきました。
目立つプロモーションというのはTVCMやイベントなど不特定多数の人を対象に話題になることを目的としたプロモーションです。目立たないプロモーションとはターゲットのみに認知されるように仕組んだプロモーションです。
目立たないプロモーションで売上を上げられると、競合が生まれないので永続的に成長できます。本日お聞きいただいている皆さんの中で、「北の快適工房」をご存知ない方もいらっしゃると思いますが、それは年齢・性別的にプロモーションターゲットではないからです。「おたくの商品は知らないよ」と言われることは褒め言葉だと思っています。
ターゲットにのみプロモーションを行い、それ以外には知られていないのに売上が上がっている状態こそが無駄な広告費を使わず、利益に繋がる理想的な形であることが理解できました。
どのプロモーション・広告が利益に繋がっているか、明確に分かることがECの良いところなのでアドエビスをしっかり使って分析していくことが大事になってきます。
利益最大化の広告運用の3つの極意
木下様が掲げる3つの極意とは以下の3つです。
- 上限CPOの決め方
新規顧客獲得数を増やすとCPAが高くなる傾向があるため、利益を最大化するためにはLTV-CPOが最も高くなるポイントを見つけ出すことが大切。 - CPOはグロスで考えてはいけない
上限CPO内に費用が収まっていても、広告単位で分けると上限CPOを越えている場合があり、その広告をやめることで利益率が上がるという考え方 - 親子CPOの考え方
通常広告とリタゲのように明確な関連性がある広告の場合は、繋げて算出することで一方の上限CPOを引き上げることが可能。(親広告:通常広告、子広告:リタゲ・指名検索)
それぞれを詳しく解説いただきました。
上限CPOの決め方
利益とは新規獲得件数×顧客1人当たりの利益(LTV-CPO)です。仮に表をご覧いただくと、獲得件数が増えれば増えるほどCPOが上がり、収穫逓減が起こります。
例だと200件から250件に変わるタイミングで収穫逓減が始まるので件数としては少ないですが、ここを上限CPOとすることで利益額が最も高くなります。売上を最大限にしろ、と言われることがあるかと思いますが、それだといずれシュリンクしてしまうので、利益額が最も高くなるポイントで上限CPOを設定することを提案してみてください。
CPOはグロスで考えてはいけない
広告をグロスで見たときに上限CPO内に収まっていて利益も出ているので良い状態です。しかし広告ごとに結果を見たときに、広告A・Bともに500件ずつ獲得していますが、実は広告Bは上限CPOを越えており、1年利益で見たときにマイナスだったのです。
もし広告Bをやめると、獲得件数や売上は半減しますが利益は100万円から150万円に増えます。簡単に言うと当社の利益率の高さはここになります。我々はこういったデータをデイリーで確認し、例で言う広告Bのようなものを無くしていくことをしています。
利益を最大化するための合理的なロジックを語っていただきましたが、広告Bが広告AのCVに間接的に貢献をしている場合もあります。こういった場合広告Bをやめてしまうと広告Aに悪影響を及ぼしかねません。
木下様はどのような考え方でその危険性を回避しているのでしょうか。
親子CPOの考え方
前述は通常広告をグロスすると利益が下がるというケースです。通常の広告とリタゲが明確に関連性がある場合は、これを繋げて算出することで上限CPOを引き上げ、利益を上げることができます。これを親子CPOと呼んでおり、親広告を通常広告、子広告をリタゲや指名検索と位置づけています。
認知から購買までネットで完結している北の達人コーポレーションの場合、指名検索はネットで認知されない限り発生しないため子広告になりますが、ビジネスモデルによっては必ずしも子広告にならないこともあります。
その上で親子CPOの考え方を解説いただきました。
上記のように上限CPOを親広告がオーバー、子広告が採算が合っている状態で親広告をやめてしまうと、繋がりがあるリタゲはいずれ無くなってしまいます。子広告の上限CPOとの差額余分2,000円を親広告に寄せると、親広告の上限CPOは8,000円になります。
実際は親広告に対しての子広告は1:1の関係ではないので、スライドのような計算式になります。このように親広告と子広告の連動性を見ていき、子広告の貯金を親上限CPOに設定し直すことを月に1回行っています。
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AI時代の次世代マーケティングとは
また、現在はAIによるマーケティングが発展していることに触れ、注意点や戦略の立て方についてご説明いただきました。
AIによる広告配信には差別化の概念がなく、同質化の動きを取ります。そのため、プロダクト戦略の立案と教師データの供給が重要になります。AIに従っていると他社とバッティングする可能性があるので、人間にしかできない差別化戦略が重要になってきます。
AIは購入した20人をベースに機械学習をします。なので最初の20人をどうするかが非常に重要です。1つの商品を細かくセグメントしていき、どういう人をターゲットにしてどういう機械学習を行わせるかは人間がやるところです。そうしなければAIを使ったところでまったく効率化はされません。
今後、Cookieが規制されて個人が識別が難しくなったときに、クリエイティブによるセグメントを行い、先に述べた3つの極意によるデータ分析をして採算を取っていくことが今後のWebマーケティングの流れになると予測しました。
最後に一社一社が利益を重視したデジタルマーケティングを行うことの重要性についてお言葉をいただきました。
基本的には「利益の出ていない広告をやめましょう」ということです。
やめた広告、つまりユーザーから受け入れられていない広告をやめてセグメントを正しく行うと、広告の相場が下がり、業界全体の利益率が上がります。それだけでなく、ユーザー様側も興味のあるコンテンツのみ配信され、メディアの視聴時間が長くなり、結果的に広告枠の増加にも繋がります。
このようなスキルアップを全員がすることでインターネットの世界は変わると木下様は力説し、利益を意識したデータ分析の考え方はアドエビスとの親和性を強く感じることができました。
開催後のアンケートでも「参考になった」というコメントが最も多く、Webマーケティングを行う上で大切なヒントをいただいた講演となりました。
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