今はモノが溢れる時代です。
新しい商品は次から次へと世に出てきますが、顧客が本当に必要に駆られて購入するモノを除いて、僅かな違いで購入意欲をかき立てるのは難しいものがあります。
数ある商品やサービスの中で、いかに自社の商品を見つけてもらい、継続的に利用してもらうかは頭を悩ませる課題でもあります。
当然ながら、マーケティング的な視点だけでは十分ではなく、ブランド価値を高めることは必要不可欠です。
今までブランディングについて何度も取り上げてきましたが、果たしてブランド価値を高めるためにはどのようなことを気にかける必要があるでしょうか?
今回は、いくつかのTIPSとともに、ブランド価値を高めるために何をすれば良いのかを見ていきましょう。
ブランド価値とは何か?
まずは「ブランド価値」という言葉が、何を指しているのかを考えてみましょう。
以前、ブランディングとは「顧客のイメージ」と表現しました。その言葉を受けると、ブランド価値とは顧客が思い描くイメージが、「どれだけ良いイメージか?」といった価値のことだと言えます。
例えばの話ですが、「Appleがかつてない、新しいテレビを世に出す!」といったプレスリリースがあったとして、あなたはどのようなイメージを想像するでしょうか?
ブランドがAppleであれば、洗練されたデザインのメタリックなボディを、それとなくイメージするのではないですか?
一方で、「Bananaというブランド(もちろん架空のものです)が新しいテレビを世に出す!」と聞いたら、何が浮かびますか?
ブランドがBananaだったら・・・きっと何もイメージできませんよね。そんなテレビのブランドは聞いたこともありません。
なぜこういったことが起こるかというと、Appleによって今まで蓄積されてきたイメージが、私たちの中にあるからです。そしてこのイメージが、新しいテレビの良いイメージを生み出しました。これはすなわち、Appleのブランド価値だと言えます。(当然、Apple嫌いの人は悪いイメージが浮かんだはずです。)
ブランドが一貫していること
それでは、ここからはこの「ブランド価値」というものを上げるために、どのような努力が必要かを見ていきましょう。
出典:BREWDOG
まずはクラフトビールの有名企業、ブリュードッグの創業者ジェームズ・ワット氏の言葉を引用します。
21世紀においては、ぶれないこと、魅力的であること、オープンであること、誠実であること、統一感を示すことができてようやく、ブランド構築の第一歩を踏み出せる。
出典:「ビジネス・フォー・パンクス」著・ジェームズ・ワット
氏が言うように、ブランド価値を高めるためには、ブランド全体の統一感が必要で、ぶれずに一貫していることが重要です。
ブランディングにおいて、顧客との接触がたった一度で終わることはまずありません。顧客視点に立てば、何度も何度もブランドに接触することで、少しずつ理解を深めて、良いイメージを醸成していきます。
この複数のタッチポイントで、ブランドから伝わるメッセージが毎回ぶれていては、良いイメージは作れないですよね。
著書「ブランド論」で、デビッド・アーカー氏は、ブランドの一貫性が勝利をもたらす理由として、以下の3つを挙げています。
- ブランドが定着するには時間がかかる。
- 特定のポジションの実質的な所有権をブランドにもたらすことができる。
- 変化は、それまで築き上げたものを薄めてしまう可能性がある。
時間がかかるだけではなく、一貫性を失うこと(=変化)でブランド価値を毀損する可能性があるといった点も考える必要がありそうです。
ブランドが持つ透明性も価値の一つ
また別の視点からも、ブランド価値を高めるために必要なことを見てみましょう。
「Oliver Cabell(オリバー・カベル)」は若者向けのバッグのブランドですが、仕入れの原価から始まり、どのようなコストがかかって販売価格が決まるのかをオープンにしています。
ブランドによっては、多額の広告費をかけるために、素材の価格からは考えられない販売価格になっていたり、デザインが良い一方で素材はチープなものを選んだりと、顧客にコストの内訳を見せられない裏側の事情もあるはずです。
それを「Oliver Cabell(オリバー・カベル)」はオープンにしてしまいました。
このように透明性を高めることでブランドが得られるものは、信頼です。「Oliver Cabell(オリバー・カベル)」の場合、その透明性=信頼こそがブランドの価値の一つだと言えます。
参考:HEAPS MAGAZINE『「ブランドの熱意とストーリー。それ一体いくらなの?」消費者が知るべき次の透明性は“価格”。コスト内訳を公開するブランドが増加』
顧客と作り上げるブランド価値
さて、ブランド価値を上げるための最後のTIPSです。
ブランドが顧客のイメージである以上、それは事業者が完全にコントロールできるものではありませんよね。
ブランドが意図しない形で良い評判も、悪い評判も広まってしまう時代です。
これほどまでにインターネットが普及して、SNSで人々がブランドと繋がる現代において、ブランド価値は顧客と一緒に作り上げるものではないでしょうか?
ジェームズ・ワット氏はこうも言います。
現代ではブランドは会社のものではなく、顧客のものだ。そして、顧客の行動がブランド形成に深く関わるようになったために、マーケティング活動は双方向の対話になった。
出典:「ビジネス・フォー・パンクス」著・ジェームズ・ワット
ここまでキーワードとして挙げた「一貫性」「透明性」に加えて、顧客のイメージをコントロールしようとするのではなく、顧客と一緒にブランドを作っていくといったアプローチは、ブランド価値を高める上で、今後ますます重要になってくるのではないでしょうか?
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