企業は常に戦っています。
外部には競合という存在がいて、内部には「このままでいいじゃないか」と訴える惰性があります。企業は、その双方と常に戦っているのです。
では、企業が競争に勝ち続けるためには、どうすればよいのでしょうか?業界や製品が様々ある中、この疑問の絶対的な答えはないでしょう。しかし、そのヒントは見つけることができます。
あなたはマイケル・ポーター教授が提唱した、3つの競争戦略をご存じですか?
ポーターは世界的に有名な経営学者で、「競争の戦略」は今なお多くの人々に読まれる名著です。彼は著書で、企業が取るべき戦略を大きく3つにわけました。
今回はその3つの戦略=コスト戦略・差別化戦略・集中戦略を、各事例に触れながらご紹介します。企業が勝ち続けるためのヒントを見つけてみてください。
競争力の源泉は何か?
……戦略の話に行く前に、大事なことがありました。
それは、自社の「競争力の源泉を知ること」です。
これは、「御社の一番の武器は何ですか?」という質問にもつながります。
競争力の源泉は2つあり、大きく分けて「コストかバリューのどちらか」になります。
コーラでたとえるなら、100円のコーラを大量に仕入れる代わりに、他企業より安くして貰うか、高付加価値を付けて1,000円で売るか?といったところです。
基本的に低コスト・高バリューは並び立たないと言われているので、いずれかを極める必要があります。
なぜなら低コストは量を追うので、高バリューまで追ってしまうと結局コストが高くつきます。しかし、高バリューは質を追うので、低コストまで追うと時間が掛けられず質が下がってしまうのです。
つまり、基本的に企業は「コストかバリューのどちらか」を競争力の源泉と定めることになるのです。
それでは、ここからポーター教授が提唱する競争戦略を見ていきましょう。戦いに勝ち続けるために、企業はどのような戦略をとればよいのでしょうか?
1. コスト戦略
一つ目は、コスト戦略です。
業界最安値をうたい、市場内での価格決定権を握ることを追求します。競合との価格戦略に勝ち、かつ利益をあげるために、固定費・変動費の圧縮が欠かせません。
いわゆる「規模」の追求です。(大きいのは良いことだ!)……大きくならざるを得ないのがコスト戦略です。
コスト戦略で有名な事例として、ヤマダ電機が挙げられます。
過去には業界2位のビックカメラに、2倍の差をつけるほどの売上高でした。その圧倒的な勝利の要因には、徹底的なコスト戦略が挙げられます。大量仕入れと物流におけるイノベーションで原価を抑え、顧客に安く豊富な品揃えを提供することで、ひたすら売上高を伸ばしました。
コスト戦略の背景には「家電という製品による差別化が難しい」という商材特性もありますが、その点を見極めて規模の追求を徹底したヤマダ電機は、コスト戦略事例の筆頭に挙げられます。
2. 差別化戦略
二つ目は、差別化戦略です。
差別化戦略では、競合との違いを追求します。その違いが顧客にとっての「価値」につながるので、顧客が選んでくれるし、差別化につながるわけです。
しかし、必ずしも品質が差別化とは限りません。品揃えの豊富さ、アフターサービスの充実も差別化の一環です。多くの企業がコストをかけて差別化に走るため、コスト戦略と差別化戦略は並存しないとされています。
ただし、顧客に選ばれる差異であることは条件として挙げられます。その差異は気にならないと顧客に判断されれば、それは差別化にはなりません。
差別化戦略で有名な事例は、モスバーガーです。モスバーガーは、マクドナルドに代表されるファーストフードの売りである「安くて早い」を捨てるかわりに、「安心安全で美味しい」を目指しました。
その結果、モスバーガーはマクドナルドや他のファーストフードにはない差異を生み出しました。これぞお手本のような差別化戦略です。
3. 集中戦略
最後、3つ目は集中戦略です。
集中戦略とは、どのマーケットで戦うか?という選択をして、そのマーケットに集中する戦略です。つまり、勝つための市場を探し、そこで「リーダー」になることを目指します。
勝つべくして勝つためには、自社にとって勝率の高い場所を選ぶ必要がありますよね?
そのためには、冒頭述べたように「競争力の源泉」を知ることです。さらに自社の武器を明確にしてマーケットを選びましょう。集中戦略で有名な事例は、国内自動車販売数・第3位のスズキです。(2015年時点)
「軽自動車」と聞いてどんな車を思い浮かべますか?
スズキの自動車を思い浮かべる人は、きっと多いでしょう。だとしたら、まさに集中戦略の賜物です。
自動車業界ではリーダーになれずとも、「軽自動車」というニッチなマーケットで、スズキはリーダーになりました。それもすべて戦略的に経営資源を集中させた結果なのです。
今回のまとめ
振り返ると、どの戦略をとるかを選択するのには、以下の質問の答えが肝心です。
自社の「競争力の源泉」は何か?
この質問の答えを熟考しつつ、御社のマーケティング戦略を練り直してみてはいかがでしょうか?
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