初心者でもない限り、マーケターであれば新規顧客を増やすことがいかに難しいことか、身をもって知っていることでしょう。
さらに新規顧客に初回の購入を促した後、継続して購入してもらうことやブランド自体のファンになってもらうことは難易度がさらに高いはずです。
そう考えると繰り返し購入してくれる、いわゆるヘビーユーザーに注力したくなる気持ちはよくわかりますが、ちょっと待ってください。
あなたがヘビーユーザーだと思っている顧客は、実はライトユーザーかもしれません。
ヘビーユーザーはライトユーザー?
ヘビーユーザーとライトユーザーという区別の仕方には、見逃してはならない盲点が潜んでいます。
そもそもヘビーユーザーという言葉の意味は、購入頻度が高く、繰り返し商品を購入する顧客のことですが、実はよく考えると「一定期間で」という言葉が先頭につきます。
それもそのはず、顧客データを分析する際はどこかで区切らなくてはならないのですから、一定期間での購入頻度を見ます。
しかし、顧客は常に別の顔を持ちます。これはご自身の生活を振り返ってみればわかるのではないでしょうか?
例えば特に気に入った清涼飲料水を、一定期間で何度も購入した記憶はありませんか?
そして、ある日を境にその飲料を買うのをやめてしまっていませんか?
何らかの分析で「ヘビーユーザー」だと認定された顧客でも、期間をずらせばライトユーザーになる可能性は大いにあります。
私たちマーケターは常にその可能性を頭の片隅に入れて、数字と向き合わなくてはなりません。
ヘビーユーザーに注力すべきでない?
「ブランディングの科学」の著者、バイロン・シャープ氏は、新規顧客よりも既存顧客に投資をしてLTVを伸ばしていくという考えに懐疑的です。
ヘビーユーザーに注力する戦略は、「確実性に欠ける」とまで言っています。以下の箇所です。
ヘビーユーザーに注力するという戦略は、彼らの現在の個人消費が今後も継続して将来の売り上げに貢献することが期待できない限り、確実性に欠ける。たとえ現在、個々のユーザーから信頼できる売り上げデータが得られていても、また、彼らの購買行動に大きな変動が見られなくても同様だ。(P.83)
この論の背景には、やはり顧客が様々な顔を持つという見逃せない点があります。
確かに裏を返せば「彼らの現在の個人消費が今後も継続して将来の売り上げに貢献することが期待」できれば、ヘビーユーザーへの投資も良いと言えます。
しかし、先に述べた通りヘビーユーザーが時が変わればライトユーザーになるかもしれないとなると、注力すべきではないとの結論が出るかもしれません。
バイロン・シャープ氏から学ぶこと
バイロン・シャープ氏の言葉から学ぶのは、我々マーケターが相手にしているのは人であり、人の感情や行動とは移ろいやすいものであるということです。
一定期間を区切ってヘビーユーザーやライトユーザーと名前をつけると、マーケティングの合理性や効率を高めることができますが、今回学んだように見失うものもあります。
私たちマーケターが、なるべく合理的で効率よく商品を人々の習慣に取り込みたいと願う一方で、そこにはユーザー1人1人が存在することを忘れてはなりません。
大量生産・大量消費社会が終焉を迎えつつある今、マーケターはそのことを忘れずに、最適なユーザーアプローチを探していくべきではないでしょうか?
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