「かんたん・あんしん・たよれる」がコンセプトの確定申告や会計ソフトを提供する弥生株式会社では、シリーズの登録ユーザー数は200万※1を突破しており、個人事業主のクラウド会計ソフト市場で5年連続シェアNo.1を獲得※2しています。
その裏側では新規獲得を増やすだけでなく、利用し続けてもらうための絶え間ない努力がありました。
今回は弥生シリーズの法人向け「弥生会計 オンライン」と個人事業主向け「やよいの青色申告 オンライン」の新規獲得と契約後のカスタマーサクセスのマネジメントを担う庄子佑さんにサービスが選ばれ続けるための取り組みについて伺いました。
※1:2020年2月末時点
※2:MM総研調査「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2020年4月末)」において
新規獲得領域とカスタマーサクセス領域におけるデータ活用の実態
新規顧客獲得の中で、弥生のオウンドメディアである「スモビバ!」のコンテンツやデータ活用はどのように運用しているのでしょうか。
興味・関心事を探るためにデータを活用しています。スモビバはスモールビジネスの経営や業務に役立つ情報発信をしているので、どういった興味・関心があるのかは、例えば「確定申告製品の繁忙期のはじまりには、経費関連の記事へのアクセスが多くなりはじめる」といったトレンドがあり、そういったものをつかんでいます。
最近で言うと軽減税率や持続化給付金など、トレンドは毎年異なります。
軽減税率で言えば、事業者の皆さんはお店のポップ一つ作るにも「軽減税率の対応はどうしたらいいんだっけ?」といった悩みがあります。そういった悩みにタイムリーに情報発信をして広く事業主の皆さんに役立つコンテンツを提供しています。それがきっかけで弊社の製品を導入いただく機会にもなったので、新しいお客様に知っていただくというのはここ最近本当に大きな流れだと思います。
ちなみに、オウンドメディアから製品サイトに流入しているかの相関はAD EBiSのサイトコンテンツ機能で確認していて、メディアを経由した製品サイトへの流入は前年比149%、新規登録は前年比148%という結果であることが分かりました。
※弥生のアドエビス活用事例はこちら。
一方でカスタマーサクセス領域の比重も大きくなっている庄子さんはデータを活用してどのようなコミュニケーションを行っているのでしょうか。そこには新規獲得とは異なる視点がありました。
継続してご利用していただくために、オンライン上でお客様の契約情報と利用状況から離脱に繋がりそうだったり、導入定着の進捗が悪かったりといったアラートを発見しています。バックオフィス業務はどんな業態であっても業務が共通化しているので、アラートにピンポイントに対応するというよりかは、共通化された悩みに対して解決のコンテンツを提供していています。
そのため一斉メールの配信やオウンドメディアで悩みを解決するといったマスなコミュニケーションが多くなります。そうすることによって少しずつ利用継続率の改善を行い、金額にすると数千万円規模のインパクトのある改善をすることができました。
個人事業主の方は経理業務に苦手意識を持つ方も多く、利用ログを見ていると「利用開始するまでに躓くこともある」と語る庄子さん。そういったオンライン上の利用ログはMAツールを使って、傾向を見ているようですが、実際どのようにしているのでしょうか。
実は担当者が更新率と使っていない機能との相関を見つけるために、利用ログから躓きや定着のポイントを探っています。例えば「契約してから◯日以内に利用開始していないと離脱しそう」とか、逆に「契約から◯日以内に初期設定をしている方は利用定着率がいい」といった傾向値を探します。
というのも、例えば確定申告だと年に1回、特に2月から3月にかけて行う方が多いので、そこでしか傾向を見ることができません。
「このデータを連携してこのコミュニケーションをする」というのが固まれば仕組み化できるのですが、毎シーズン新しい発見があるので仕組み化はその後になりますね。
弥生の成長は、並々ならぬ努力によってトレンド・傾向を見つけ出し、適切なコミュニケーションの上に成り立っていることが分かりました。
庄子さんは現在、再現性のある成果を継続できるチームづくりに注力しています。事業の成長スピードを持続させるために一度きりの施策にならないようにすることが大事なのは頭では分かりますが、実際その考えに至ったきっかけは何だったのでしょうか。
再現性のカギは「パートナーシップ」と「共通言語化」
弥生に入社した2014年当初はチームが少人数で個人がパフォーマンスを出せば何とかやり切れる状態でしたが、何年か経って新卒や中途採用が増える中で、個人のパフォーマンスでは限界を感じていました。また、個人で早く目的地に行くよりも「チームで遠くの目的地に行けるように」と役割の変化を求められたことがきっかけです。
フレームワークとか、効果検証の考え方や、プロモーション・コミュニケーションの考え方を、誰が見ても納得できて、考えて、業務遂行できるような形を作りたいと思いました。
庄子さんは「パートナーも含めて一つのチーム」だと考えていて、例えば広告代理店さんにはGoogleアナリティクスのアカウントを開放して毎日同じ数字を見ながら電話していたそうです。
パートナーには前日比、前月比、前年比の進捗だけでなく、我々の課題ややりたいことが何なのかを細かくコミュニケーションを取るようにしています。
プロダクトのセールス戦略や市場動向も全て共有させていただくこともあり、数値的な目標とも共有しながら「この部分を御社と一緒にやりたいんです」といったオリエンテーションの機会は必ずいただき、パートナーとして価値を発揮していただけるよう心がけるようにしてます。
フレームワークやテンプレート、考え方を一様にすれば良いだけではなく、社内外との丁寧なコミュニケーションを欠かさない姿勢も再現性の一翼を担っていました。
上述のデータの活用でも肝になるところにしっかり時間をかけていますが、再現性を生み出す上でどういったところに時間や苦労があったのでしょうか。
「優秀なパートナーや仲間に恵まれていて、むしろ楽をさせてもらっている」とした上で次のように庄子さんは続けます。
潜在的な共通意識はあるのに、言語化できていないところをフレームワーク化したり顕在化させることは時間がかかりました。
メディアとかパートナーと会話する時に、メンバーによって違うことを言うと、プロモーション全体で俯瞰した時にバラバラなコミュニケーションになってしまいます。どの担当者がどんなメディアとどんな施策をやってても、発信するメッセージに共通性ができるようにしています。今は「こういう客層で、こういうタイミングの方にはこういうコミュニケーションをする」というのが、経験値としても持てて、統一がされてきてる感覚です。
そうは言ってもデータの解釈は人が行うことですし、どうコミュニケーションを取っていくかを今でも泥臭くやっていることは大変なところだと思います。
泥臭くても時間をかけて作り上げた環境。こうした取り組みの中で属人化を改善できたポイントが直近であるようです。
今年のプロモーションを担当してくれたメンバーが色々なパートナーとのディレクションをすごく円滑に回してくれて、新規顧客獲得は過去最高の前年成長率を出してくれました。私はほとんど前線に立つことがなかったので、しっかり再現性を出してくれたなと実感することができました。
ホスピタリティが根幹の「弥生らしいコミュニケーション」
弥生におけるコミュニケーションはVisionである「事業コンシェルジュ」からきており、「会計ソフトは便利ですよ」ではなく「何かお困りごとないですか」という思想が庄子さんが入社する前から根付いていました。
カスタマーセンターのTwitterアカウントが事業で困っている人を見つけて「もしかしたらこちらの情報がお役に立つかもしれません」と声をかけるなど、Visionを体現するコミュニケーションが展開されています。
弥生でのキャリア6年目を迎える庄子さんはこれからもお客様に選ばれ続けるための弥生らしいコミュニケーションをこう表現しました。
弥生の製品はお客様のお困りごとを解決するような「かんたん、あんしん、たよれる」というコンセプトで作ってるので、プロモーションでもカスタマーサクセスでもお客様のお困りごとを解決するようなコミュニケーションを目指しています。
弥生らしさはホスピタリティのように、中小事業、スモールビジネスのオーナーの手助けになるような製品・サービス・企業であるという姿勢を示すことだと思っています。
弥生に入って5年ですが、お客様本位のVisionの中で浮いた存在にならないように「庄子さんのコミュニケーションはいいね」といったお客様の役に立てる場面を作りたいですね。
データを解釈するのも活用するのも、コミュニケーションも全ては人が行うこと。一見非効率的に見える取り組みも、真に顧客に喜ばれるサービスを提供する上では理想的な姿になります。
現在カスタマーサクセス領域でのフレームワークづくりを推進する庄子さんは今後もデータを活用した理想のチームづくりとコミュニケーションを探究し続けることでしょう。
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記事ではご紹介できなかった部分もあるのでこの機会にぜひご覧ください!