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SmartHRの商談数が700まで伸びた舞台裏。
組織改編で導入した「ブランドマーケティング」とは

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Web会議ツールを使った画期的なTVCMが記憶に新しい人もいるかもしれません。

新型コロナウィルスの影響で、人事労務の新しい方法を模索する企業が増えるタイミングに、「SmartHR」はテレワークを訴求するTVCMを打ちました。

SmartHRはクラウド人事労務ソフトとして、業界シェアNo.1※1。すでに一定の認知度はありましたが、TVCMの成果は計り知れず、4月のリード数は3,300MQL※2、商談数は500超と過去最高を記録して、6月には商談数が700まで伸びたのです。

TVCMの訴求が良かったことは言うまでもありませんが、この多大なる成果の舞台裏には、多くのBtoB企業がぶつかる課題を乗り越えるための組織改編がありました。

ARCCの記念すべき第一回となったインタビューは、その組織改編をリードしたSmartHR 執行役員・VP of Marketingの岡本剛典さんです。

※1 『HRTechクラウド市場の実態と展望 2019年度 労務管理クラウド部門』ミック経済研究所調べ
※2 MQL:Marketing Qualified Leadの略。一定の条件を満たした見込み顧客のことを指す。


SmartHRに入社して1年で行った組織改編

SmartHR執行役員・VP of Marketingの岡本剛典さん

SmartHRに入社した当時はMQLしか見ていなくて、目標に対してその場その場の打ち手しかできておらず、運頼みのような状態でした。

そこで計画的にインサイドセールスにリードを供給する体制を作ろうと、Marketo×Salesforceで施策別や経路別にMQLを分析し、1MQLあたりの獲得単価もスプレッドシートでつきあわせて計算するようにしました。

計測環境が整うと過去データも遡って閲覧できるようになるので、だいたいの数字が読めるようになるんです。施策別にMQLの伸びが見えるので、施策をどう積み上げればいいのかの仮説を立てやすくなります。

だんだんと半年先の計画が立てられるようになり、実行する体制も整ってきました。

つづいて岡本さんは組織改編のために動き出します。背景には3つの理由がありました。

中長期的なブランディング活動をする上で、リード獲得の指標だけではうまく成果を評価できません。しかし、同じ組織でリード獲得もブランディングも同時に見るのは限界があります。

当時のSmartHR社にとって、組織改編は必要不可欠な意志決定でした。

2018年の10月の入社から1年ほどかけて、チーフと呼ばれる責任者たちと一緒に、ある程度は私のトップダウンで組織改編を進めていきました。

デジタルマーケティングとオフラインという機能別に分かれた組織から、「リードマネジメント」と「ブランドマーケティング」という目的別に分かれた2つの組織に変えたんです。

「ブランドマーケティング」とは聞き慣れない言葉ですが、ここにも岡本さんの狙いがあります。

実は「ブランディング」ではなくて「ブランドマーケティング」としたのにも理由があります。「ブランディング」と言ってしまうと、事業へのリターンやROIという意識が抜けてしまいそうなので、あえて「マーケティング」をつけて意識づけを行っているのです。

MQL・商談数が倍増したTVCM

BtoCに比べるとBtoBビジネスにおけるマーケティングの歴史は浅く、マーケティングオートメーションや各種ツールの進化とともに、戦略や体系立てられた手法が世に多く出はじめたのは比較的最近のことだと言えます。

ブランディングに関しても同様で、多くの企業が潜在層にどのようにアプローチすれば良いのか、あるいはどのように評価すればいいのかと、常に頭を悩ませています。

SmartHRは「ブランドマーケティング」で、どのような指標を追って施策を打ち、何を成果としているのでしょうか。

「ブランドマーケティング」では、とにかく知ってもらうのが大事なので、外部の調査会社に依頼して「認知率」を計測します。

人事労務担当者を私たちのメインターゲット、管理部門の意思決定者・決裁者などをサブターゲットとして、それぞれの認知率が施策の前後でどう変化したか。「助成想起」と「純粋想起」などを見ていくのです。

あとは「指名検索数」も見ます。ものによるんですけど、基本的にはマスプロモーションは中長期的なコミュニケーションなので、すぐにはデジタルには跳ね返ってきません。

コミュニケーション施策として成り立っているのであれば、認知獲得後、時間が経つにつれて好感度や興味関心の創出に繋がり、結果として「指名検索数」が増えるはずなんです。

「ブランドマーケティング」を新設したのち、SmartHRは交通広告・TVCM・オリコミチラシといった施策を連続的に展開し、認知獲得に大きく寄与しました。中でも冒頭でも触れたTVCMは大きな反響があり、時間をかけることなく成果が出たそうです。

SmartHRで作ったテレワーク訴求のTVCMはすぐに成果が出ました。他の施策の影響もありますが、CMを打った前後で指名検索数が倍に跳ね上がったのです。指名検索数だけ上がったら興味本位の検索者が増えただけですが、MQLも商談数も倍増しました。

しかもCMを打ったのが4月下旬からゴールデンウィークぐらいまでだったんですけど、5月6月までずっと指名検索数は上がったままだったので、本当に伝えたいメッセージが伝わって浸透していると実感することができました。

これはブランディングとしても意味があった、とても成功した事例だと思います。

「THE MODEL」のようなスタンダードを作りたい

岡本さんはご自身のキャリアを「苦労しているタイプで、輝かしくない」と謙遜しつつも、「もともと理数系なんです」と言葉を続けました。

もともとテレマーケティングやダイレクトメール、チラシといったマーケティング施策で経験を積みました。なのでデジタルマーケティングとの出会いは遅く、5年前のリスティング広告が最初でした。

しかしもともと理数系で、統計も学んでいましたし、前職で為替のディーリングの部署にいたので、デジタルマーケティングの裏側を理解するのは早かったと思います。DSPも金融エンジニアが開発したものですし、仕組みさえ分かれば理解できます。

デジタルは改善するとすぐにフィードバックがあるので、うまくいった、いかなかったが分かりやすい。自分がやったことの成果を可視化しやすいので面白いですよね。

一見、結びつきがないように思える岡本さんのキャリアを振り返ると、まるで点と点が線になるようにつながり、導かれるようにして現職に就いたことがわかります。まさに天職とも思える仕事をしている今、今後の展望をどのように考えているのでしょうか。

チームメンバーとは、BtoBマーケティングの領域で一番のマーケティング組織になろうと話しています。新しいことにチャレンジして成功や失敗を積み上げ、BtoBマーケティングの「THE MODEL」のようなスタンダードを作りたいと思っているんです。

個人でも、せっかくB to Bマーケティングというまだまだ未開拓な領域やってるので、この領域の第一人者みたいな存在になれたらいいなと考えています。

岡本さんの一つひとつの言葉には、新たな取り組みや施策を実行し続ける信念と、成果に裏打ちされた自信を感じました。

TVCMの大成功は決してゴールではなく、SmartHRが繰り広げる快進撃の序章に過ぎないのかもしれません。