メジャーよりもインディーズ?D2Cブランドが熱狂的なファンを生むために必要なこと。

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私たちARCCが「理想のデータマーケティングを探究する」メディアとしてスタートしたのは、2020年8月。振り返ると延べ28人ものトッププレイヤーにお話を伺ってきました。

そのどれもが素晴らしく、そしてためになる話でしたが、もうすぐ1周年を迎えるこのタイミングでもっと詳しいお話を直接聞きたい。そう考えた私たちはARCC編集長・吉本が自ら、会いたい人に会いにいく新連載を始めることにしました。

記念すべき第一回目にお話を伺うのは、株式会社フラクタの代表取締役 河野 貴伸さん。EC・D2Cの最前線を知る河野さんに、D2Cブランドのブランディングについて話をお聞きしました。

D2Cブランドが目指す「インディーズバンド」の真意

吉本:「ブランド」とか「ブランディング」って関わり方や、立場によって様々な捉え方をされますよね。最初にお聞きしたいのですが、河野さんはご自身でどのように定義しているんですか?

河野様(以下、敬称略):ブランディングについての書籍は何冊も出ているし、すでに体系化されて、ある程度は完成していると思っています。ただ世の中で言われるブランディングは、大企業のものがメイン。例えばコカ・コーラやAppleのブランディングは数億人といった人々にどうやって選ばれるのかを考えています。

しかしD2Cのブランディングはちょっと違っていて、例えるなら“熱狂的なファンがいるインディーズバンドを目指す”みたいな話です。

武道館でライブをやるんじゃなくて、ライブハウスで毎回50人とかが来てくれるようなバンドになる。そのためには、音はこういう音で自分たちが伝えたいメッセージはこうで、格好はこう。そういうことを決めてかないとなりません。

僕が考えるD2Cのブランディングは、そういうイメージです。

吉本:メジャーアーティストになるよりも、振り向いてもらいたい人にちゃんと届けるインディーズバンドになる。

河野:そうです。それがD2Cにおけるブランディングなのかなって。だからファンになってくれる人たちは少なくていいんです。まずは少ない単位で「熱狂的なファンを生み出す」というのは、僕らが考えるD2Cにおけるブランディングの重要なテーマなんです。

吉本:なるほど。D2Cで熱狂的なファンを作ろうとした時に、気をつけなくてはならないことはなんですか?

河野:Direct to Consumer(or Customer)の名の通り、顧客の姿は明確でなくてはなりません。あとは自分たちが何者なのか。そして、提供する価値も明確じゃないと成り立たないですね。

吉本:顧客理解が最初にくるんですね。

河野:そうですね。ただ先ほどのメジャーかインディーズかにつながる話ですが、昨今の顧客理解の文脈には誤解があると思っています。「顧客理解」と言った時に、対象が1億人いて、しかも老若男女いろんな人がいたら、顧客を理解できるはずはないんです。

将来的にテクノロジーがすごく発達して、最高のマーケターがブランディングやマーケティング、統計学の学術理論を駆使すれば理解できるかもしれないけど、10代の子どもから80代のおじいちゃんまでを理解するのは難易度が高すぎます。

吉本:一般的な顧客理解って、セグメントを切って最大公約数的な人を探して・・・というアプローチをしがちですけど、確かに「そんな人、存在するんだっけ?」となった経験はありますね。

河野:でもインディーズバンドのように、「この人たちに好きになってもらえればいい」と考えると、途端に顧客を理解しやすくなります。

さらに言うと、今までの顧客理解は、「まだ買ったことがない人」を理解しようとするんですけど、僕はその難易度を一気に下げて、「買ってくれた人」を理解するのが顧客理解だと捉えています。

だから、僕らは買ってくれた人に直接インタビューをします。オープンクエスチョンで「何でそんな好きになってくれたんですか?」とか、「他はどんな商品と比べましたか?」といったことを聞くんです。

それに買ってくれた人の友人は感覚がだいたい近いので、基本的には友人関係や同じ大学、同じ会社といったつながりで広めてもらいます。すると、だんだん近似性にグラデーションがかかってくるので、その広がりが波打つ様子を観察する感覚でいるとブランドや商品を広めやすいですね。

D2Cブランドが行うべき”健康診断”とは

吉本:イルグルムではアドエビスというプロダクトを通じて、様々な企業の効果測定を行ってきました。

これまではデジタルマーケティングと言っても広告に頼らざるを得なかったので、広告の効果測定が中心でした。今では、SNSやメールマーケティング、オウンドメディアと、より広い領域での効果測定ニーズが増えてきました。

河野さんはD2Cにおいて見ておくべき指標には、どんなものがあるとお考えですか?

メジャーよりもインディーズ?D2Cブランドが熱狂的なファンを生むために必要なこと。
株式会社フラクタ 河野 貴伸 様

河野:D2Cと言っても、実はパフォーマンスヘビーかビジョンヘビーで分かれるという現象が起きています。極端な話をすると、前者はCPAを追求するからコストをとにかく下げようとする。例えばパッケージはとにかく簡易にするし、配送はできる限りコストを重視します。

一方で後者はパッケージにすごくこだわりますし、芸能人やインフルエンサーにお金を払って売ろうとする。でも、双方ともそれだけでは実際売れないんですよね。本当はこの間でバランスをとらないとなりません。

メジャーよりもインディーズ?D2Cブランドが熱狂的なファンを生むために必要なこと。

僕らは過去の経験から様々なデータを分析し、指標としています。例えば、原価に対して広告費をどれくらいかけるべきで、平均CVRやLTVはどれくらいかとか。その平均値からずれないように、常に現状と照らし合わせる。これがD2Cにおける、まず行うべき健康診断のようなものです。

メジャーよりもインディーズ?D2Cブランドが熱狂的なファンを生むために必要なこと。
メジャーよりもインディーズ?D2Cブランドが熱狂的なファンを生むために必要なこと。

吉本:そうは言っても、ブランディングにどれだけお金かけるべきかって難しい話ですよね。パッケージにコストをかけても、どれだけ効果があるのでしょうか。

河野:まず何のためにブランディングをするかというと、他と比べて際立って認識されるため。ここが一つのゴールになります。例えば「高級マットレスのブランド」だと認識されれば、広告が出て他社の商品と価格が横並びになった時に、「同じ値段だけど、この商品の方が良い」と思っていただけますよね。

だから際立って認識されると、CPAが下がり広告費を下げられるはずなんです。

ブランディングをしたら広告は必要ないと言う人もいますが、広告は必要です。ただブランディングをすることで、競合と比べて広告のCPAを最低ラインで維持できるといった成果は出ます。その結果、「必要以上の広告は出さなくて良い」という結論はもちろんあります。

なのでCPAを下げる仮説を元に、差分を「パッケージの質を上げる」といったような顧客体験の向上に割り振ることができます。CPAが下がれば幅広く予算をかけられるはずなので、もっといろんな形で広めていける。そのサイクルが生まれるんです。

吉本 啓顕
株式会社イルグルム 執行役員 CMO(ARCC編集長) 吉本 啓顕(ひろあき)

吉本:なるほど。全てに関連性があるということですね。

自分たちでもできるブランディングはある

吉本:河野さんは本当に数多くのEC・D2Cに関わってきたと思うのですが、ブランドの支援をする中で河野さんは今、率直にどんなことを感じていますか?

河野:「もっとみんなブランディングしようよ」とは思っています。ブランディングを専門にする有名な会社に頼ってみるという手もありますけど、支援できるキャパシティは決まっている。そこに頼れなかった時に、もっと自分たちでもやれるブランディングはあるはずなんです。

初心者だからと怯むことなく、みんながチャレンジしていけるようになるといい。そのためにも、自分たちのブランドがどういう状態なのかを健康診断で客観的に知り、伸ばせるところを伸ばして試行錯誤をしていく必要があります。

その繰り返しで日本のブランド自体ももっと増えていけば、それが最終的には日本が世界の中でインパクトを出せるすごく大きな要素になると思っています。

吉本:そうですね。アドエビスはその健康診断、いわば状態の可視化自体が仕事。数値化できるところは数値化していこうというスタンスです。

ただ広告自体はなくならないと思うものの、最近は広告のプロモーションとブランディングの垣根がなくなっていますよね。僕らも広告のトラッキングだけではなくて、その手前の「どこで健康診断できるんだろう」といった点は、改めて考えなくてはならないなと感じました。

河野:言葉で言うと難しくなっちゃうんですけど、人間って感性によるところもあるんですよね。0か100かじゃなくて。数字を見て「なるほど」と思うこともあるし、見なくていいものもある。良い悪いじゃなくて、そこはスタイルだと思うんです。

でも「みんながこう言ってるからこう」みたいな思考停止は良くないので、ブランドらしさ、自分たちらしさを考えて、スタイルや考え方やメソッド、ツールも選んでいくのがいいと思いますね。

吉本:そうですね。変化が大きい世の中ですが、河野さんの言葉の通り思考停止にならず、僕らも新しいソリューションをどんどん開発していきたいと思います。本日は貴重なお話ありがとうございました。


プロフィール
河野 貴伸 様

株式会社フラクタ 代表取締役
河野 貴伸(こうの たかのぶ)

1982年生まれ。東京の下町生まれ、下町育ち。2000年からフリーランスのCGデザイナー、作曲家、webデザイナーとして活動。美容室やアパレルを専門にWebデザイン・ロゴ・パンフレットなどの制作を手がける。 「日本のブランド価値の総量を増やす」をミッションに、ブランドビジネス全体への支援活動及びコマース業界全体の発展とShopifyの普及をメインに全国でセミナー及び執筆活動中。

吉本 啓顕

株式会社イルグルム 執行役員 CMO(ARCC編集長)
吉本 啓顕(よしもと ひろあき)

2009年、株式会社イルグルムに新卒入社。主力製品のエンジニア、プロジェクトマネージャー、営業を経て、マーケティング部の立ち上げ責任者に就任。アドエビスのデジタル戦略を統括し、事業の成長に貢献。現在はアドエビス事業の統括として、製品企画とマーケティング部門を牽引。2019年10月、執行役員に就任。


本稿ではご紹介しきれなかった河野さんの知見・ノウハウは多岐に亘ります。
顧客の興味や感動の深度を加味した「三次元のカスタマージャーニー」の話や、顧客のタッチポイントごとにアドエビスを活用して「どんな人がファンになりやすいか?」を分析した話は以下で詳しくご紹介しています。

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