新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、人々の生活様式は一変しました。
経済は大きな打撃を受け、企業は一時も無駄にすることなく変革を迫られる日々です。
この変化は多くの業界で起きていることですが、特に外出自粛期間に実質的に売上を上げることができず、今なお苦戦を強いられる小売業は予断を許さない状況です。
今、いったい現場では何が起こっているのでしょうか。そしてこの変化に際して、テクノロジーはどんな未来を創ることができるのでしょうか。
今回はチャットボット型マーケティングツール「SYNALIO(シナリオ)」を開発・提供する、株式会社ギブリーの執行役員・Conversation Tech部門長、大熊 勇樹 さんに話を伺いました。
当たり前が変わる、強制的なデジタルシフト
新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で、強制的なデジタルシフトが起きています。ECは手軽に若い人たちが購入する場所だったのが、ご年配の方も実店舗への来店が難しくなったことで「手軽じゃないけど、ここで買わなきゃいけない」という状況になりました。
そもそもお店で買う行為自体が減り、かつ人々がECで購入するようになったので、小売や外食、サービス業は本当に苦労しています。私たちは当たり前が大きく変わったことに気づき、動かなくてはなりません。
巷でも「ニューノーマル」や「ウィズコロナ」という言葉が繰り返されますが、現場の状況を知る大熊さんの言葉はより真に迫るものがあります。今までの常識が通用しない、いわば新しい時代にSYNALIOはどのような提案をしているのでしょうか。
“オンライン接客”という言葉が出る以前から、僕らが目指している世界はチャットボットを活用してもらう世界ではなく「Conversation Tech ※」です。
小売店は「店を閉めなきゃいけない」とか、開けても「売れない」という状態でしたが、リアルじゃなくても「顔が見えれば問題ない」と発想の転換をして、SYNALIOにZoomのAPIと連携した新機能を追加しました。
そうしたらこれが思った以上に反響があったんです。
僕らはデジタルでのコミュニケーションが活性化して、「企業がユーザーを」、「ユーザーが企業を」理解できればチャットボットは別になくてもいいと思っています。
Zoom連携をしたことでSYNALIOによる接客方法は「オンライン接客」「有人チャット」「フォーム対応」「チャットボット」の4つになりました。
顧客は店舗スタッフとコミュニケーションをとりたい場合、「オンライン接客」「有人チャット」を選択しますし、店舗スタッフと話したくないというニーズには「チャットボット」「フォーム」が対応しています。SYNALIOは顧客のニーズに合わせて4つの接客方法を用意できるのです。
SYNALIOを導入して成果を上げた企業の一つに、IKEUCHI ORGANIC 株式会社(以下、イケウチオーガニック)があります。
オーガニックコットンと風力発電の風で織るオーガニックタオル『IKEUCHI ORGANIC』を製造・販売するイケウチオーガニックは、SYNALIOを活用することで顧客がECサイトでタオル選びをする際のお手伝いができるようになりました。
自ら商品を選ぶことが難しい方や、贈る相手に合ったタオルをおすすめしてほしい方に対してチャットボットとフォームを通じて最適な提案を行っています。また、上質な接客を求める顧客に対しては、SYNALIOのフォームでご希望のお時間を伺い、Zoomで40分のオンライン接客を実施しています。
これらの取り組みをした結果、SYNALIO導入後に『IKEUCHI ORGANIC』のEC購入率は明らかに上昇したそうです。
SYNALIOの実績が折り紙つきであることは間違いありませんが、次々と生み出されるサービスや企画の根底にはいったい何があるのでしょうか。大熊さんの言葉にもあった「Conversation Tech や、SYNALIOのビジョンにヒントがあるようです。
※SYNALIOは独自コンセプトとして、コミュニケーション履歴に基づく各種データを取得/分析/活用し、顧客を見える化することで、最適なアプローチを行う技術のことを「Conversation Tech」と定義している。
「Conversation Tech」とSYNALIOのビジョン
SYNALIOの当初のタグラインは「簡単チャットボット」です。もともと便利なツールとして売っていたのですが、なかなか売れませんでした。今思えば、なぜこのツールを使うのかっていうWhyの部分がなくて、ほとんどがWhatの話だったんです。
そこから僕らが作りたい世界観を「おもてなし」や「コミュニケーション」、「会話」といったテーマで作り直して、デジタルの世界で会話をすることで相手を理解できるっていうのが実はコアバリューなんじゃないかと気づいたんです。
これをカンバセーション(会話)のテクノロジー、「Conversation Tech」と名付けました。
サイモン・シネック氏のゴールデンサークルで知られる通り、人を動かすのは「What?」ではなく「Why?」。ここに気づいた大熊さんは、「Conversation Tech」を定義するのと同時にビジョンも見直しました。
たぶんGoogleで最初に検索した人ってすごく感動したはずです。でも今は誰も感動していません。むしろ検索なんかしなくなっています。
でもマスではなくて、本当にパーソナライズされた、自分では生きてるうちに出会えないような情報がネットには実はいっぱいあって、これが提案される時代がSociety 5.0で来るはずなんです。僕らはここにもう一度、驚きやアハ体験、感動を生みたい。
そういう「感動がある社会って素敵じゃないか」という想いがあって、その想いを元に「新しい感動体験を創る」という新しいビジョンもつくりました。
テクノロジーを大衆化して「新しい感動体験を創る」
大熊さんのキャリアは、紙のデザインを行うベンチャー企業からスタートしました。飛び込み営業をして制作から納品まで自分で完結する、まさに何でもやる新人時代。その後、転職を経てWebサイト制作の営業に従事しました。
ここでITに触れ、テクノロジーへの理解を深めていくのですが、一方でテクノロジーのジレンマにも気づきます。
企業にとってインターネットは使うべきですが、一方でテクノロジーが進化するほど企業ファーストになっていると感じていて、一人の消費者としては思うところがありました。
それに世の中の情報はたくさん集まっていますが、インターネット検索で最適解は選べませんよね。美味しい店に行きたかったら、詳しい知り合いに聞いた方が早いです。
確かにインターネット上には膨大な情報があり、かつての検索は便利でした。しかし情報があまりに増えた今では、検索の利便性は相対的に下がり、検索行為そのものを手段として選ばない人も増えています。
私たちは膨大な情報をアーカイブするテクノロジーの便利さを享受する一方で、最適解を選べない不便さというジレンマを感じているのかもしれません。
しかしSYNALIOが掲げるのは「Conversation Tech」。あくまでテクノロジーです。大熊さんはテクノロジーを使って、どんな未来を描いているのでしょうか。
僕らは今までサイトにチャットボットをつけて、顧客が企業のことを理解できるようにと様々な提案をしてきましたが、その先にある未来は「顧客一人ひとりにコンシェルジュがつく」ことだと考えています。
だからこそテキストベースのチャットでは限界があって、人が介在しなければ実現は難しいと言うのは最初から分かっていたんです。
今回のZoom連携はそのための手段の一つですが、これからは検索エンジン以上に情報を持ったコンシェルジュに、何でも聞けるようにしていきたいと考えています。
「インターネット検索は不便」とする一方で、大熊さんはテクノロジーに諦めの感情を抱いたわけではありません。「noteの深津さんもおっしゃっていますが※」と前置きして、最後にこんな未来の展望を語ってくださいました。
僕は一部のブルジョワが独占していたものを、テクノロジーによって大衆化することに共感します。だから僕らはConversation Techでコンシェルジュの大衆化をしなくてはならないと思っているんです。
テクノロジーによってコンシェルジュを大衆化し、「新しい感動体験を創る」。顧客と真摯に向き合い、未来を切り拓かんとするSYNALIOの躍進に、これからも大きな期待が寄せられます。
※参考:テクノロジの本質は民主化(note CXO深津さんのnote)
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