大事なのは「顔の見える1人」。ad:tech(アドテック)初のハイブリッド開催に至る軌跡を辿る。

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多くの人にとって、2020年は激動の1年だったはずです。

「ad:tech(アドテック)」をはじめとする大型イベントを企画・運営するComexposium Japan(コムエクスポジアム・ジャパン)も、新型コロナウィルスの影響を受けて大きな試練を迎えました。

しかし、10月に行われた「ad:tech tokyo 2020」ではリアルとオンラインのハイブリッド開催で臨み、2日合計で5,931人が参加する印象的なイベントを実現しています。※

この結果を出すまでにいったい何があったのでしょうか。そしてこのような良いイベントを生み出すために、同社はどのような試行錯誤をしているのでしょうか。今回はComexposium Japanの代表取締役社長、古市優子さんにお話を伺いました。

※人数は、来場者とオンライン参加者の合計。
出典:「ad:tech tokyo 2020」リアル会場での実施は終了。2日合計で5,931人が参加し、11月6日まで全セッションのアーカイブ配信を実施(PR TIMES)

ハイブリッドだからこそ生まれた新しい発見

2020年は本当に波乱万丈な1年でした。

去年のはじめはコロナがそこまで話題になっていなくて、皆さん2月くらいに「あれ、様子がおかしいぞ」と気づき、3月に「これは大変だ」となったと思います。

ただ私たちは3月の頭に大きなイベントを企画していたので、2月から問い合わせは来るし、国の補助も無かったのでキャンセル対応をどうしていいか分からない。前例が無い中、自分たちでルールを決めて対応の流れを考えなくてはなりませんでした。

でもこの経験をしたことで、オンライン化しないと立ち行かなくなると早いタイミングで気づけたんです。

コムエクスポジアム・ジャパン株式会社 古市優子 様

コロナの影響を受けるのが早かったのが、不幸中の幸いでしたね。苦労人の先駆者です(笑)

ただ古市さんも当初は楽観的に考えていました。「リアルができないからオンライン」と考え、あくまでリアルの代替としてオンラインを捉えていたのです。

しかし、オリンピックの開催が延期になったことで、これは一過性のものではないと意識を変えました。ここからリアルとオンラインを組み合わせ、イベントの「ハイブリッド開催」に舵を切っていきます。

よくリアルかオンラインか、みたいな二項対立の話になりがちですが、それは危険だと気づきました。表裏の関係ではなく、それぞれの良いところを活かしてハイブリッドで作らなくてはなりません。

2021年にビジネスを軌道に乗せるために、予算度外視でやれること全部やりました。ハイブリッド開催を狙ってやったというより、壮大なテストマーケティングに近いですね。

前例が無い試みに試行錯誤する中で、古市さんはハイブリッドだからこそ生まれた予期せぬ発見をします。

イベント会場にいながら、オンラインで視聴する人がいたんです。

「なんで会場に行かないんですか?」と聞くと、予定があって途中で会場を抜けなくちゃならないけど、それが気まずいからだそうです。

会場で目の前の講演を聴きながらオンラインで隣の会場の講演を聴く人や、講演を別室で聞きながら相槌を打ったり、その講演内容を話題に話し合う人もいたりして。だから来年は副音声部屋を作ったら面白い。そういう新しいアイディアもたくさん生まれました。

当初、このようなことは全く期待していなかったんです。必要に駆られてハイブリッドにしたら、新しい発見がたくさんありました。

ただ今後は、「1万人を超えるようなイベントだと、オンライン対応はマストになっていく」と古市さんは言います。

数百人規模ならまだしも、1万人を超えるようなイベントでオンライン対応をしていないと、何らかの理由でイベントに来れない人に門戸を開いていないと捉えられてもおかしくありません。

アクセサビリティの観点でも、車椅子の方のためにスロープがあるように、会場に行きたくても行けない人のためにオンライン対応は必要です。

大事にしているのは「顔の見える1人」。

「ハイブリッド開催」の集大成とも言える「ad:tech tokyo2020」は多くの参加者を集め、オンラインとオフラインが組み合わさったことで多様性が増すとともに、新たな可能性も示唆する印象的なイベントとなりました。

素人目には手放しで大成功だと言い切りたいところですが、ふと疑問が残ります。そもそも古市さんは「良いイベント」をどのように捉えているのでしょうか。

私が考える良いイベントは、ちゃんと成果が見つかるイベントです。劇やライブのようなエンタメならいいのですが、ビジネスイベントで「楽しい」は評価軸にありません。

主催者はみんなが喜んでくれて嬉しいと思いますが、来てくれた人の感想が「楽しかった」だけでは危険。自分や会社の成長でも、取引相手や投資先の発見でもいいのですが、何か見つかるのが良いビジネスイベントです。

あとは私の肌感覚ですが、3割のコアなファンの方と、6割の普通に「まあ参加したよ」くらいの方と、1割のイベントに懐疑的な方がいると良い感じのイベントになるかなって思っています。

みんなが熱狂してしまうと、良い議論は生まれないと思うんです。

懐疑的な人はネガティブなことをアンケートで言ってくれるし、ちょっと違う視点を持っていたり疑問を抱いていたりします。この人たちがいる方がバランスがいいんです。

確かに全員の考えが揃わないからこそ、新しい意見が生まれ議論が活性化します。参加者が100%賛同するイベントは、ビジネスにおいては危ういのかもしれません。

それではイベントの良し悪しは、どのように分析しているのでしょうか。

まずは定量的なデータを全部見ます。

どの登壇者の紹介ページがどれくらい見られているか、どの登壇者経由でパスがどれくらい売れたかといったデータを見て、自分たちなりの仮説を立てていきます。

でも定量的なデータでは、登壇者の人気度と当日の参加人数までわかっても、実際の反応まではわかりません。もしかしたら興味があるから参加したけど、実際は面白くなかったかもしれません。

だから大事にしているのは、「顔の見える1人」です。

私たちのイベントに朝一番で並んでる人には絶対話しかけますし、今年はテレアポでしたけど、最初にパスを買ってくださった100人には、基本的にお会いして話をお聞きします。

スポンサー企業にはイベント開催から半年後にコンタクトをとって、状況を伺っています。ビジネスに繋がるかが勝負なので、半年後でも1年後でも何か生まれてたらOKです。

もちろんアンケート結果から得られるフィードバックも大切ですが、その人の本音って、たぶん1時間くらい話さないと出てこないと思うんです。それにアンケートは1人1票ですけど、重視すべき1票と、しなくて良い1票とがあると思うんですよね。

だからこそ熱量の高い人にピンポイントで聞きに行ったほうが、リアルな声が聞けると思っています。

「ad:tech tokyo」のようなイベントは、時に「華々しい」「派手な」といった印象が先行します。

しかし、その舞台裏には「顔の見える1人」を大事にして参加者の本音を引き出し、良いイベントを真摯に追求する古市さんの姿がありました。

海を越えるブランドを作りたい

古市さんのキャリアスタートは、日本を代表するIT企業として名高いサイバーエージェント社。スマートフォン黎明期にITビジネスの経験を積んだのち、Comexposium Japanに転職します。

リアルイベントって結局人間ありきだから、人間の力だけでいろんなことができるし、工夫の余地があります。

インターネットは大好きですが私より詳しい人はたくさんいますし、私はコードも書けないしデザインもできない。でもリアルイベントなら、何か貢献できると思ったんです。

Comexposium Japanに入社してから時は経ち、突然の社長就任から次の4月で丸2年。このタイミングに予期せぬ形で、「ハイブリッド開催」という前例のない取り組みをすることなりました。

しかしこの取り組みを完遂できたのも、古市さんのバックグラウンドにITビジネスの経験があったから。そう考えると、オンラインの世界からリアル(オフライン)に転身した古市さんの不思議な巡り合わせを感じずにはいられません。

最後に今後の抱負を聞くと、「海を越えるブランドを作りたい」と答えが返ってきました。

「ad:tech」はアメリカで始まったブランドですし、海外のイベントを日本でローカライズしたり、海外のイベントに日本企業をお連れしたりしますが、いずれは逆をやりたいです。

日本で作ったイベントを海外に持って行って、海を越えるブランドを作りたいです。

大きな試練を乗り越えて2021年を迎えた古市さん、そしてComexposium Japanのこれからに期待が寄せられます。

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