カスタマーエクスペリエンスという言葉を聞いたことがありますか?
Webは店舗などのリアルな場とは違い、顧客の喜んだ顔が見えたり、不満げな顔が見えたりといったことがありません。そのため、基本的には顧客の様子を知る手掛かりは、デジタルを通じて得る0と1の集積となります。
しかし、実際はインターネットを通じた向こう側に生身の人間がいて、何らかの感情を持ってボタンをクリックしたり、商品を購入したりといった「体験」をしています。
Webマーケティングにおけるカスタマーエクスペリエンスは、その体験のことを指しています。今回はこの辺のことを、さらに詳しく理解していきましょう。
ちなみに、アドエビスマーケラボでは、何度かカスタマージャーニーの解説をしてきましたが、「カスタマーエクスペリエンス」はカスタマージャーニーとは異なるマーケティング用語です。
今回は、カスタマーエクスペリエンスという言葉の意味と、カスタマーエクスペリエンスを向上する5つの方法について解説したいと思います。
1. カスタマーエクスペリエンスとは?
では、まずカスタマーエクスペリエンスを簡単に解説したいと思います。
カスタマーエクスペリエンスは、英語表記でCustomer ExperienceやCXと表され、直訳すると「顧客の体験」を意味する言葉です。どんな体験かと言うと、主に商品・サービスを購入・利用する際に顧客が企業・ブランドから得た体験のことを指しています。
ここ数年で耳にするようになった言葉と思いきや、起源を辿ると西暦2000年あたりにありました。
2. カスタマーエクスペリエンスの起源
アメリカの経営学者、バーンド・H・シュミット氏は2000年に出版した著書「経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力」の中で、「顧客は商品の機能・利便性に加えて、プラスαの心地よい経験を求めるようになっている」と説いたのです。
「経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力」著:バーンド・H. シュミット
バーンド・H・シュミット氏が語る「経験価値マーケティング」は、顧客が購入前に感じる楽しさや、使用時の快適さといった経験を重視して、これらの経験を顧客に与えることでマーケティングを行うことに焦点を当てています。
出典:Googleブックス「経験価値マーケティング: 消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力」
実は、カスタマーエクスペリエンスの起源は、バーンド・H・シュミット氏が語る「経験価値マーケティング」にあると言われているのです。
3. カスタマーエクスペリエンスとカスタマージャーニーの違い
カスタマーエクスペリエンスと混同しがちな言葉に、カスタマージャーニーという言葉があります。どちらも「カスタマー」という言葉がある横文字ですが、意味は異なります。
ここでは2つの言葉の違いを簡単に解説したいと思います。
カスタマーエクスペリエンスは前述した通り、端的に説明すると「顧客の体験」を表します。一方で、カスタマージャーニーは顧客と商品・サービスの各タッチポイントを旅に見立てて表現したものです。(以下、カスタマージャーニーマップの例です。)
出典:インターネットバンキングを使う顧客のカスタマージャーニーマップ事例
最大の違いは、カスタマーエクスペリエンスが「顧客の体験」というワンシーンを切り取っているのに対して、カスタマージャーニーは顧客と商品・サービスとのタッチポイントをプロセスで表現している点です。
私たちマーケターは、カスタマージャーニーで顧客の購入・利用プロセスを俯瞰して、各タッチポイントにおけるカスタマーエクスペリエンスを高めていかなくてはなりません。
4. カスタマーエクスペリエンス向上のための5つの方法
それでは、どのようにしてカスタマーエクスペリエンスを向上すれば良いのでしょうか?
ここでは、主にWebマーケティングにおいて、カスタマーエクスペリエンスを高めるために私たちマーケターがとれる方法を5つ挙げました。
4-1. UI/UXの改善
何かの情報を得たい、あるいは商品を購入したい顧客にとって、UI/UXは決して見逃せない要素の一つです。
いくらニーズが高くても、UI/UXがよくなければ、他のWebサイトに訪れますよね?
UI/UXの改善をすることで、顧客が対象のページを見つけるスピードを早めたり、新たな価値ある情報を得たり、購入までの最短経路をとることにつながります。つまり、UI/UXを改善することは、カスタマーエクスペリエンスを高めることに繋がります。
4-2. スマートフォン対応
すでにスマートフォンは全世帯の64%以上の世帯で保有されていると言われています。さらに世代別に見れば、若い世代でスマートフォンの利用率が高いことは明らかです。
現代において、スマートフォン対応をしていないことは、カスタマーエクスペリエンスを損なう可能性が高いと言えます。スマートフォンからWebサイトを見た時に、文字が細かすぎて見るのをやめてしまった経験は、誰でも一度くらいはあるのではないでしょうか?
4-3. Web接客ツールの導入
Web接客ツールとは、チャットなどを通じてサイト来訪者をサポートしたり、クーポンを発行して購買を促進したりするツールです。もちろん一概には言えませんが、Web接客ツールによるカスタマーエクスペリエンス向上は可能です。
「一概に言えない」と言ったのは、顧客の購買体験を邪魔しないタイミングでサポートメッセージを発したり、顧客に役立つ(無駄にならない)クーポンが発行したりいった前提があるからです。(接客も内容によっては、購買意欲を削ぐこともありますよね。)
4-4. EFOの導入
EFOとは、エントリーフォーム最適化のことです。欲しい商品があっても、フォームへの入力が煩わしくて買うのをやめたことはありませんか?
EFOは、顧客のフォーム入力をサポートします。入力が簡単になったり、時間が短縮されたりするのは、カスタマーエクスペリエンスの向上に繋がりますよね。特にECサイトなど、フォーム入力が必須のビジネスでは、EFOが果たす役割は大きいです。
4-5. 顧客にとって余計な広告の排除
ページ読み込みの際に、PCブラウザ全面に表示されるWeb広告や、スマートフォンの下部から浮かび上がるように表示される広告など、見たことはないでしょうか?
これらの広告は、基本的には「いかにユーザーにクリックしてもらうか?」といった視点で作られた広告で、ユーザーのことを考えた広告とは言えません。
カスタマーエクスペリエンスの向上のためには、こうした広告をなるべく排除して、ユーザーファーストのサイト設計を優先することが必要です。
今回のまとめ
カスタマーエクスペリエンスの向上と聞くと、最初は難しい印象があったかもしれません。
ただ今回ご紹介した5つの方法は、それぞれ以前から言われていることで、すでに多くの企業が行っていることです。(おそらく御社も、すでに着手していることがあるはずです。)
今後は、すでに行っていることと、これから対応していくことを整理して、総合的にカスタマーエクスペリエンスの向上を図っていく必要があるでしょう。まずは、自社の状況から何ができるかを紐解いてみてください。
ARCC限定イベントへのご招待・限定コンテンツの配信・
新着記事の案内・イベント情報の先行配信など、特典が満載です。