あなたはロイヤルカスタマー戦略と聞いて、具体的な内容や方法を想像できますか?
現代において、商品の機能や性能だけでは、競合他社との差別化は難しくなったと言えます。ロイヤルカスタマー戦略は、企業の将来的な存続・発展にも大きく影響するため、早くから腰を据えて取り組むことは大事だと言えるでしょう。
あなたの会社はロイヤルカスタマーに対して有効な戦略を持っているでしょうか?今回は、ロイヤルカスタマー戦略の具体的な方法と、事例3選をご紹介します。
この機会にロイヤルカスタマー戦略について知り、御社のマーケティングに役立てていただければ幸いです。
1. ロイヤルカスタマー戦略とは?
ロイヤルカスタマーは、「企業の製品・サービスに対して忠誠心が高い顧客」のことです。
つまり、特に理由もなく購入した顧客ではなく、「この会社のこの商品が買いたい」という明確な意思をもって購入に至る顧客のことを指します。
詳しくはこちら:「愛ある忠告を大事に!ロイヤルカスタマーの本当の意味・定義とは?」
ロイヤルカスタマー戦略は、このロイヤルカスタマーをCRM・CEMといった取り組みの中で、計画的に増やしていく戦略のことです。
新規顧客の獲得コストは、既存顧客にかけるコストの5倍だという「1:5の法則」をご存じですか?
ロイヤルカスタマーは明確な意思を持っているので、解約率も格段に低いリピーターであり、企業からのアプローチにも積極的に反応してくれる可能性が高いと考えられます。
コストをかけて新規顧客を獲得することも大事ですが、よりコストがかからない既存顧客のロイヤルティを上げるロイヤルカスタマー戦略はより大事だと言えます。
2. ロイヤルカスタマー戦略のための3ステップ
次に、ロイヤルカスタマー戦略のための3ステップをご紹介します。
ロイヤルカスタマー戦略は「決める」「見つける」「測る」の3ステップで進めます。それぞれを詳しくみていきましょう。
2-1. ロイヤルカスタマーの明文化(決める)
さて、最初のステップは「決める」です。ここでは、「自社製品・サービスのロイヤルカスタマーは誰なのか?」を明文化して決めていきます。
製品によっては、年に1回でも毎年必ず買ってくれる人がロイヤルカスタマーかもしれませんし、毎月5回は買ってもらわないと、ロイヤルカスタマーだと言えないかもしれません。当然、各企業の製品・サービスごとに、ロイヤルカスタマーの定義は違うのです。
一貫したロイヤルカスタマー戦略を実施するためにも、誰もがわかりやすい形で明文化しておく必要があります。
2-2. カスタマージャーニーマップの作成(見つける)
次にカスタマージャーニーマップを使って、ロイヤルカスタマーとなりうる顧客を見つけましょう。
カスタマージャーニーマップとは、顧客の購入に至るまでの体験を正確に予測し、それを可視化する手法です。
カスタマージャーニーマップは、以下の5ステップで作成するのがオススメです。
- ペルソナの設定
- ペルソナの行動を明文化する
- 顧客参加型の仮説検証
- フレームワークを決定する
- カスタマージャーニーマップ完成
参考:「カスタマージャーニーマップの作り方5ステップ&国内・海外事例5選!」
顧客と企業とのタッチポイントを可視化することで、「顧客が興味を抱くポイント」「顧客が離反するポイント」などを探ることができ、顧客のロイヤルティを上げるポイントが見えてくるでしょう。
2-3. ロイヤルカスタマーの定期的な成果確認と分析(測る)
最後に「測る」です。
いざロイヤルカスタマーになってくれた顧客を、そのまま放置することなどありえません。
ロイヤルカスタマーの購入回数や購入金額など、成果は定期的に確認する必要があります。継続的に購入していた顧客がいきなり購入をストップしていたら、その原因を即座に分析すべきです。
可能な限り、顧客に直接連絡をとり、離反した理由を丁寧に聞き取りましょう。そこから企業の課題が見えてくることがあります。
また、ロイヤルカスタマーの定義も、定期的に見直し、ロイヤルティ向上のための施策がきちんと収益向上に結びついているのかをチェックするとよいでしょう。
マーケティングにおける「測り方」は、以下のコンテンツが参考になります。
参考:「あなたのマーケティングを進化させる2つのロジカルシンキングとは?」
3. ロイヤルカスタマー戦略の核?NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは
ロイヤルカスタマー戦略の「測る」を体系的に行うには、基準となる指標が必要です。
そこで注目されるのが、NPS(ネット・プロモーター・スコア)と呼ばれる指標です。
NPSの調査方法は簡単で、まず顧客に「あなたはこの商品・サービスを友人に薦めますか?」と聞き、その11段階の評価を元にした数値によって、3つのグループに分けます。
NPSの調査方法
上記の調査を複数の顧客に対して行い、推奨者の割合から批判者の割合を引くと、NPSが算出できます。(推奨者の割合-批判者の割合=NPS)
NPSは「満足度」ではなく「推奨度」を図るところにメリットがあります。自分がアンケートに回答する時を思い浮かべればわかると思うのですが、特に製品・サービスに文句がなければ概ね「満足/やや満足」などと回答しますよね?
しかし「推奨」とは他人に薦めるわけですから、より満足度が高い状態=ロイヤルカスタマーを発見しやすいことになります。
NPSは顧客の感情を数値化するため、企業と感情的に結びついている(愛着があるから購入している)可能性が高いロイヤルカスタマーの分析に適していると言われています。
NPSによる指標の計測・分析は、ロイヤルカスタマー戦略の核になるといっても過言ではないかもしれません。
4. ロイヤルカスタマー戦略の事例3選
それではロイヤルカスタマー戦略を実践している、3つの事例をご紹介します。
各企業の戦略や方法は異なりますが、軸となっているのは「企業視点」ではなく「顧客視点」での課題改善だと言うことです。それでは、見てみましょう。
4-1. チューリッヒ保険会社の事例
損害保険でおなじみのチューリッヒは、カスタマージャーニーマップ作成、NPS導入など、顧客接点の最適化を率先して行っている企業です。
例えば、顧客の不満が溜まりやすいとされるコールセンターの品質向上や、IVR(自動応答コンピュータシステム)、Webアンケートで出たNPSの結果を元に、電話でのフォローや不満内容の調査、改善など顧客視点に立った施策を積極的に行っています。
その改善は業界でも高い評価を得ており、「優秀コンタクトセンター表彰制度」において平成25、26年と連続受賞しています。
参考:チューリッヒ保険会社「平成26年度カスタマーサポート表彰制度」において優秀賞を受賞
4-2. ソニー損保の事例
こちらも損害保険でおなじみソニー損保でも、2015年度より部署横断で顧客ロイヤルティ向上を本格化させています。
ソニー損保 webサイト
オンライン施策としては、顧客から寄せられた声をまとめたコミュニケーションサイトでは、実際の顧客の声に対し、「改善しました」「検討します」「申し訳ございません」で答える「コエキク改善レポート」を開示しています。
顧客一人一人の声に真摯に耳を傾け改善していくことで、NPSを向上させて、顧客のロイヤルティを高めようといった取り組みです。
コミュニケーションサイトを開設して顧客に対して適切なケアを行うことは、短期的な費用対効果を見ればマイナスになるものです。しかしソニー損保は、長期的な顧客との関係構築が企業の発展に繋がるという判断から、このような改善を進めているのでしょう。
4-3. ナノ・ユニバースの事例
大手アパレル企業のナノ・ユニバースは、ECサイトを「ロイヤルカスタマーのための受け皿」として、社長自ら陣頭指揮を取ってシステム・サイト改修を行った過去があります。
ナノ・ユニバース webサイト
Web上でのリッチな体験、検索の利便性、リコメンドの見やすさなどの改善を、すべてロイヤルカスタマー視点で行っており、ECサイトを通じて顧客のロイヤリティをさらに高めようとする試みは成功をおさめたようです。
出典:ネットショップ担当者フォーラム「優良顧客を満足させるECサイトにすることで、売上高を約2倍にしたナノ・ユニバースの事例に学ぶ」
今回のまとめ
今回、ロイヤルカスタマー戦略で成果を上げている事例を複数ご紹介しました。
ご紹介した企業は、共通して変革を「顧客視点」で行っています。企業の将来的な存続・発展には、顧客のことを真摯に考える姿勢が必要だと改めて感じますね。こうした姿勢がロイヤルカスタマーを作っていくのでしょう。
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