データと人々の感情をつなぐためにnanocolorがしている2つのこと

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「データ解析 × ユーザー心理 × クリエイティブ」

一見難しそうなテーマながら、わかりやすくためになり、何より楽しく読める情報を発信し続ける人がいます。noteには2,000「いいね」を超える人気記事もあり、読者から集まる熱い支持が一目でわかります。

その「人」とは、株式会社nanocolor(ナノカラー)で代表取締役を務め、ご自身も創業から10年で1,000本のLPを作ったクリエイターでもある川端康介さんです。

現在の仕事に至るまでに、どのような過去や想いの結実があったのでしょうか。そして日々データと向き合い、人々の感情とデータをつなぐためにどんなことをしているのでしょうか。今回は川端さんにお話を伺いました。

僕はマーケターではない

株式会社nanocolor 代表取締役 川端 康介様

僕は25歳で結婚し子どもが生まれたのですが、その時に身体を悪くして実はあまり働いてなかったんです。退院したあと、何気なく見つけたアクセサリーショップのECを立ち上げる責任者の採用募集があり、奇跡的に入社しました。

入社すると部署には僕1人だったので、ECモールの立ち上げのために独学でHTML、Photoshop、広告、商品開発、物流まで現場で身につけました。これが初めてのECです。当時はまだ店舗数も少ない時代でしたので、全てが手探りの状態でしたが少しづつ事業も拡大することができました。

立ち上げたECモールの運営で手一杯だった川端さんのもとに、やがて他社からWebページやクリエイティブ制作の相談が来るようになります。

制作することがビジネスになると初めて知ったくらい僕は業界に無知でした。そこで「制作」と「販売」の2軸でナノカラーを立ち上げたのですが、早々に販売業は撤退し制作業に専念しました。当時、僕が制作していることもありデザイナー目線での提案が軸にあったので、まさか自分がマーケティング領域に踏み入れている意識は全くなかったですね。

自らのEC経験を活かし、「いくらで何をどう作るか」「商品をどう顧客に届けるか」を考えて提案していたら、川端さんはいつの間にか「マーケティング」と呼ばれるような仕事をしていたと言います。

でも僕自身、マーケターという意識は一切ないんですよ。だからマーケターと呼ばれる人に会ったり、発信する情報を見たりすると僕と全然違うと思います。

僕は本音も建前も嘘も使います。だからこそ目の前の人が何を考えているのかずっと不安な状態で生きてきた気がします。だから仕草や目線、言葉遣い、趣向など観察し「こう思っているかもしれない」と妄想する癖がありました。

それは自分と他人の距離を確かめる作業だったと思います。

でもECだとコンバージョンというわかりやすい数字で結果が出る。気に入って購入した人が実在した事実を確認できます。人の感情はわからないけど、データは正義だと思う瞬間があったんです。

データと感情をつなぐために

「人の感情があまりわからない」と言う川端さんは、それゆえ“人”の感情を知るための努力を人一倍続けてきました。

だからこそ、商品を誰に届けるのかを徹底的に考えようとします。

例えば僕が面識のない方におすすめのモノを差し出すより、飲みに行って仲良くなった人に勧める方が「いいね、買ってみるよ」と言ってくれる可能性は高いはずです。これは僕が相手を理解し、(この人だったら?)と仮説を立てた上で、おすすめする方法も切り口も変えることができるからです。

デジタルでも向こう側にいる人間の人格を見定めて最適なコンテンツを差し出せば、反応は変わるんじゃないかって思っています。

だから「都内在住・20代」みたいなペルソナだけじゃ、何も役に立っていないんです。

しかし多くの制作現場で生まれるペルソナには感情が見えにくいことがあります。人は合理的に考えているようで、実際は非合理的に決断していることも多々ある。データと感情をつなぐ間を埋めるには、やっぱり一人の個人名、固有名詞がある人を見つけるのが一番良いと思っています。

マーケティングにおける「ペルソナ」は使い古された言葉と言っていいでしょう。商品を届ける対象として、デモグラフィック情報を設定することはよくあることです。

しかし川端さんはそのような形式的なペルソナを否定し、データと感情をつなぐために具体的な人を想像することが大事だと繰り返し強調します。

nanocolorでは常に知り合いの人の声を絶えず集めておくことと、商品のレビューをストックし続けること、この2つをしています。

nanocolor独自のフレームワークを使いつつ、スタッフ自身やスタッフの友達を座談会形式で集めて実際に商品を使うんです。会話の中で商品に対する愚痴と褒めを両方話す感じですね。そこで集まった声とレビューを元に、フレームワークに落とし込んでいきます。

あと僕たちは単品リピート通販に特化してるので、同様の商品のレビューは結構あります。だからユーザーが何に期待して、どういうふうに使い、どこに期待外れだったから悪いレビューを書いたのか、もしくはどんな期待に応えられてるから高評価なのかを早い段階で理解することができるんです。

※nanocolor独自のフレームワークは、川端さんのnoteにとても詳しく書いてあります。
ターゲット設計からクリエイティブテストまでの10STEPワークシート

nanocolorの新事業構想

ひたすらユーザーと真摯に向き合い、その心を知ろうとアクションを積み重ねて成果を上げる。川端さんは自らを「マーケターではない」としつつも、その姿勢や思考はマーケターそのもののようにも映ります。

そんな川端さん率いるnanocolorは、クリエイティブやLPで短期的にユーザーを増やすマーケティング 施策を提案する一方、今までとは違う新しい事業構想も練っているそうです。

ブランドとお客さんのコミュニケーションの場を作る事業を始めようとしています。

これは僕自身が感じたことなんですが、Twitterを始めてnoteを書いて、ウェビナーなるものにチャレンジしたら、僕を知ってくれる人が増えました。ビジネスに役立つのか分からなかったのですが、今は回り回ってほとんどのお客さんが僕をTwitterやnoteで知ってくれています。

この経験からブランドもいろんな点が線につながり、線が面になって面積を広げていくように認知拡大していくことが一番重要なことだと思ったんです。

企業のブランドがSNSをやる時代になったとはいえ、未だにお客さんとの接点は意外に少なく、代表的なものはメールか同梱物くらいしかありません。ブランドの発信が広がっていくために、具体的にはどんな構想があるのでしょうか。

例えばの話ですが、あいにく企業と顧客の間を繋いでいるのは単なる商品でしかありません。しかし人が作って人に届ける限り、人同士のコミュニケーションの上にビジネスが成り立っていると考えています。

だからこそ、継続利用してくれている方々に継続割引のお知らせばかりしていないで、「本当にありがとう」という感情を企業ではなく人として伝えること、伝える場所を作ること、そしてその繋がりがコミュニティとして形成されるような支援を構想しています。

実際に僕はSNSとコンテンツ発信により距離や利害関係を超えて人と繋がることができました。

だから普段マーケティング施策を提案するBtoCのビジネスモデルにも転用できると考えています。ここは今までクリエイティブやLPを作って獲得の成果を上げてきたnanocolorだからこそ、獲得後の顧客に対してのサービス支援にも説得力を持たせられると信じています。

「データ解析 × ユーザー心理 × クリエイティブ」の領域で川端さんが積み上げてきたノウハウの根底には、人の感情を愚直に知りたいと願う一人の人間の想いがありました。

新事業の構想も含め、川端さんとnanocolorは今度どのような動きを見せるのでしょうか。これからも引き続き目が離せません。

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